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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))

【教育講演】
環境ホルモンと人類の未来


堤 治
東京大学医学部産科婦人科学教室教授


 2001 年の現在,二十世紀を振り返ると科学文明の恩恵により人類は未曽有の繁栄を得た
といえよう.その反面,地球環境の汚染という大きな課題も生じている.ダイオキシンに
代表される人類が作り出した化学物質のいくつかは野生動物の生殖異変を引き起こし,「奪
われし未来」に示されたように動物種によっては絶滅の危機に瀕しているものもある.こ
れらの環境汚染物質は猛毒であるだけでなく,微量でも正常なホルモン作用(主に女性ホ
ルモン)に影響を与え内分泌撹乱物質(環境ホルモン)として働くことが知られてきた.
環境ホルモン問題は新聞雑誌テレビなどのメディアにも取り上げられ,社会的関心も高
い.動物実験からは生殖機能への影響,子宮内膜症等のエストロゲン依存性疾患との関連,
母体被爆の次世代影響も指摘されている.ヒト精子数減少という報告の真偽は別として不
妊症や子宮内膜症の増加は実感されており,環境ホルモンとヒトの生殖機能等への影響を
解明することは人類の未来にとって重要な問題になりつつあると考える.
 研究アプローチとして環境ホルモンのヒトへの汚染の程度を明らかにすることが必要で
ある.缶や瓶からナノモルレベルで溶出するビスフェノールA を例にとると,河川等の環
境から検出されるのみならず,血液,臍帯血,卵胞液,羊水などからも1 〜10 nM 程度検出
される.この汚染の評価をおこなうために各種実験を展開している.興味深い成績を紹介
すると,ビスフェノールA のマウス胚培養液添加では,1 〜3 nM では胚発育に対する促進
効果,逆に100 オM では抑制効果が明らかになった.ビスフェノールA の高濃度における
作用は従来の毒性量による用量反応性のある部分と考えることができる.これに対して,
1 〜3 nM の低濃度域については毒性量と異なり,作用自体も毒性と逆反応であると判断で
きる(low dose effect ).この濃度は,環境中に存在し,ヒトの血液や卵胞液で検出される
濃度と大きな差異はない点が重要だと思われる.さらに胚移植実験等の成績から出生後の
次世代影響も観察され,生殖機能のみならず,エストロゲン依存性疾患の増加,青少年の
行動異常等人類に起こり十分解明されていない事実との関連を検討する必要が痛感され
る.
 環境ホルモンに関して最も重要でかつ対応が遅れている問題としてヒトの体内動態解
析や体外排出除去法開発がある.環境ホルモンは腸肝循環をしていると考えられてお
り,活性炭(薬用炭)を基盤にした物質による最新の取り組みについても紹介したい
と思う.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3) 227-227, 2001


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