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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))

【教育講演】
HRTと脂質代謝


有澤 正義
平塚市民病院産婦人科主任医長


 近年,エストロゲン(E )の脂質代謝へのさまざまな関与が明らかにされ,E 欠乏状態が
女性の動脈硬化性疾患の発症に大きく影響することがわかってきた.閉経前後のE の減少
に伴い,女性の血中総コレステロール(TC )およびトリグリセリド(TG )は上昇し,この
結果,動脈硬化が促進され,虚血性心疾患をはじめとする動脈硬化性疾患の発症が急増す
る.TC およびTG は,血中でリポ蛋白として存在している.主なリポ蛋白には,カイロミ
クロン(CM ),カイロミクロンレムナント(CM‐ R ),VLDL ,IDL ,LDL およびHDL 等が
ある.食事由来の脂質代謝は外因性脂質代謝経路と呼ばれ,CM ,CM‐ R の流れである.こ
れに対して,肝臓から分泌されるVLDL はリポ蛋白リパーゼ(LPL )の働きにより,その
中のTG が水解されIDL となり,さらに肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL )の働きに
より,LDL となる.この代謝過程は,外因性に対して内因性脂質代謝経路と呼ばれ,別名
VLDL‐ IDL‐ LDL カスケードと言う.E は,このカスケードに対してさまざまな影響を与え
る.すなわち,E はVLDL の合成分泌を促進し,カスケードにVLDL を供給するとともに,
アポ蛋白B およびE を認識するLDL レセプターを肝細胞内で誘導する.誘導されたLDL
レセプターは,肝細胞内へのLDL,IDL の取り込みを促進する.また,E はHTGL を抑制し,
IDL よりLDL への経路を抑え,血中LDL をさらに減少させる.代謝が抑制されたIDL
は,誘導されたLDL レセプターにより効率的に処理される.その結果,カスケード代謝は
亢進され,代謝の流れの過程で産生されるHDL は増加し,コレステロール逆転送系が賦活
される.さらにE は抗酸化作用,血管拡張作用も有し,その強力な抗動脈硬化作用により
動脈硬化性疾患に予防的に作用している.欧米で普及しているホルモン補充療法(HRT )の
目的の一つは,この強力な抗動脈硬化作用を利用した動脈硬化性疾患の予防であり,急速
な高齢化社会を迎える我が国においても,HRT に対する医療側の正しい理解と早急な普及
が望まれる.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3) 229-229, 2001


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