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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))

【シンポジウム】
中高年女性のプライマリケア―HRT を中心として―


矢野 哲
東京大学


 近年,ホルモン補充療法(HRT )が中高年女性のプライマリケアにおいて注目を集めて
いる.更年期障害,高脂血症,閉経後骨粗鬆症,尿失禁などの原因はエストロゲンの欠乏
にあると考えられ,それぞれの病態・症状に対するエストロゲンの改善・予防効果につい
てこれまで数多くの基礎研究および臨床的観察研究が報告されてきた.しかしながら,こ
のようにHRT の有効性を示す結果が得られるのは,HRT を進んで受ける女性は比較的健
康で教養も高く,適切な生活習慣を維持していることが多いからではないかというselec‐
tion bias の問題が従来より指摘されてきた.そこで,今回,最近の無作為化対照試験のみを
採り上げ,閉経後女性におけるHRT の有効性を検証した.
 更年期障害において,ホットフラッシュなどの血管運動神経症状,抑うつなどの精神症
状,肩こり,睡眠障害から腟壁萎縮まで多くの愁訴にエストロゲンは改善効果を有するの
で,HRT を施行することは推奨してよいと考えられる.抑うつ症状については,アンドロ
ゲンがより強い改善効果を有するというエビデンスが示されており,症例によってはアン
ドロゲンの使用も考慮されるが,血中脂質プロファイルの悪化などの副作用の発現もある
ので慎重を要する.
 HRT が閉経後女性における虚血性心疾患の二次予防に有効でないという最近の米国の
大規模無作為化対照試験の結果は,これまでの期待を裏切るものであった.しかしながら,
この研究では,比較的重症例が多数対象とされていることから,結果の解釈には慎重でな
ければならない.一方,一次予防に関しては,HRT が閉経後女性における血清脂質プロファ
イルを改善するという点から有効であろうとの見解が多いが,現在施行中の大規模無作為
化対照試験の結果が出るまでは断定できない.
 閉経後女性におけるHRT の全般的な骨量増加効果は明らかであるが,骨折予防効果に
関しては非脊椎骨に対するメタアナリシスが一つあるのみで,腰椎に対するエビデンスは
ない.X 線写真判定による骨折率の低下をエンドポイントとした長期の大規模無作為化対
照試験の結果が待たれるところである.
 中高年女性の約40 %に尿失禁症状が認められている.エストロゲン低下に伴う下部尿路
の萎縮が尿失禁の発生に関与する可能性が高いと考えられ,さらに,下部尿路にエストロ
ゲンリセプターの存在することから,尿失禁に対するHRT の有用性は以前より期待され
ていた.しかしながら,最近の無作為化対照試験において,HRT による尿失禁症状の改善
は認められなかった.現時点では,HRT は閉経後女性の尿失禁に対する治療の第一選択と
して推奨されない.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2) 104-104, 2002


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