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第105回学術集会(平成15年6月8日)

【ランチョンセミナー3(6階・601)】
3.女性ホルモンと心血管系変化 これからの新しいホルモン補充療法


若槻 明彦
高知医科大学周産母子センター


 ホルモン補充療法(HRT)が動脈硬化に抑制的に作用することはこれまで数多く報告されてきた.しかし,1998年のHeart and Estrogen/Progestin Replacement Study(HERS)によれば,心血管疾患を有する女性に対し,HRTはイベント発生を抑制できず,最初の1年間は逆にHRTによりイベントが増加したと報告しており,HRTは心血管疾患の2次予防には無効という結果であった.さらに,Estrogen Replacement and Atherosclerosis(ERA)やWomen's Estrogen for Stroke Trial(WEST)でも同様に心血管疾患を有する女性に対し,HRTは心や脳血管疾患の進展を抑制できなかったと結論している.また,昨年発表されたWomen's Health Initiative(WHI)によると,健康な閉経後女性を対象とした場合でもHRTは心血管疾患の発症を抑制できず,逆に発症を軽度増加したと報告している.これらのstudy designには対象者における年齢や心血管疾患の危険因子の程度などいくつかの問題点はあるものの,HRTには動脈硬化に抑制的な作用のみならず,促進的な作用も有すると考えるべきである.我々はすでにHRTによる動脈硬化への悪影響の存在を明らかにしている.
 (1)併用するプロゲスチンがエストロゲンの血管内皮改善作用やHDL増加作用を相殺する.
 (2)エストロゲンによるトリグリセライド(TG)の増加がLDLを酸化されやすい小型粒子に変化させる.
 (3)エストロゲンはCRP,IL-6上昇など炎症促進作用を有する.
 さらに,我々はこれらのHRTの短所をどのように改善すればよいかを検討してきた.その結果,HRTの投与ルートを経口から経皮へ変更する,あるいは経口エストロゲン量を減量することで,TG増加によるLDLの小粒子化やCRP,IL-6などの上昇が抑制されることが示された.また,併用するプロゲスチン製剤を合成型から天然型へ変更することで,エストロゲンの血管内皮改善作用やHDL増加作用が温存されることも示された.今後は,日本人を対象としたさらなる臨床的検討の蓄積により,将来,心血管疾患リスクの低下が可能となる新しいHRTの確立が望まれる.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2) 240-240, 2003


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