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第105回学術集会(平成15年6月8日)

【ランチョンセミナー5(7階・701)】
5.女性のメンタルヘルスケア


堀口 文
慶應義塾大学・メルボルン大学医学部社会女性健康キイセンター


 女性のメンタルヘルス(精神保健)は生殖機能,慢性疾患および悪性腫瘍などとの関連が深く,また心理的要因の影響を強く受けるので産婦人科領域の診療には心身医学的な配慮が求められている.特に今後増加が予想される環境の悪化やストレス因子として働く心理社会的要因は女性の健康に著しく影響すると思われるので,日常の診療のなかで常にメンタルヘルスケアーを念頭においた対応が必要である.
 神経伝達物質との関連において卵胞ホルモンおよび黄体ホルモンの中枢神経への影響は正常性周期においても気分の変調や身体症状となって現れ,激症の月経前症候群や摂食障害などは学生や勤労女性のメンタルヘルスケアに重大な問題を起こしている.また妊娠や出産に関連した精神疾患は妊娠しなければ罹患しなかったものであり,ヘルスケアーシステムにおける十分な配慮が必要である.若年妊娠やその中絶および避妊は未婚女性にとり極めて心理的および身体的負担であり,その後の生殖機能に影響を与える.高度医療技術による不妊治療や分娩,更年期障害なども様々な心理的インパクトをもたらす.
 女性は男性より精神疾患の罹病率が高く,特に今後女性の主要な疾患としてうつ病の増加が推測されている.その主な原因は心理社会的要因と考えられ,その一つに幼児虐待の既往や夫からの暴力がある.虐待されている女性は,常にストレスに曝されており,不定愁訴のため,抗不安薬や鎮痛薬の長期間投与をうける傾向がある.メンタルヘルスケアーにおいてこれら精神疾患や精神症状に対し医師患者間の信頼関係と心理的配慮が重要なことは言うまでもないが確実な治療法として抗うつ薬や向精神薬などの薬物療法がある.またうつ病はcomorbidityとして月経前症候群,摂食障害,パニック障害,更年期障害および若い時からの不安神経症などとの合併が多く産婦人科医にとり注意が必要である.
 女性性器の悪性腫瘍は生命への脅威の他に治療後の性機能への喪失感や不安感などがあり,身体的な健康を回復しても心理的な問題が解決できないときは日常生活や性生活が障害される.
 現在更年期外来の調査では更年期うつ病の約半数は正しい診断が行われていないので,不適切な治療を受けており,患者の苦痛は解消されない.最近の抗うつ薬には副作用のすくないSSRIや,また向精神薬を使用していても母乳保育が可能となっているなど薬剤への期待も大きくなっている.心理療法(カウンセリング)は心因への気付きや家族の協力などを得て症状の改善をはかる方法であるが,薬物療法との併用はさらに治療効果を促進する.女性は生殖機能を通じ人生の危機に遭遇するので,産婦人科医は常に女性のライフサイクルに特有な心理的反応やその対処行動を理解し,患者へのメンタルヘルスケアーに注目すべきである.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2) 242-242, 2003


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