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第106回学術集会(平成15年10月5日)

【ランチョンセミナー2(10階・1001-2)】
2.婦人科癌臨床試験の動向と展望―2003年ASCOの発表を中心に―


藤原 恵一
川崎医科大学


 最近発表された婦人科癌臨床試験結果を通じて現在の動向を紹介するとともに今後を展望したい.
 本年のASCOで最もホットな話題はなんといっても久々に婦人科癌の研究がPlenary Sessionで発表されたことであろう.GOG122研究 Whole abdominal radiotherapy versus combination doxorubicin-cisplatin chemotherapy in advanced endometrial carcinoma:A randomized phase III trial of the Gynecologic Oncology Group. はFIGO III/IV期の子宮体癌症例に対して,単純子宮全摘,両側付属器切除を行った後,補助療法として全腹部照射(Whole abdominal irradiation)を行う群(WAI群)とDoxorubicin+Cisplatinの化学療法を行う群(AP群)に無作為割付を行い予後と安全性を比較したものである.WAI群では全腹部に対して150cGyのフラクションで20日間合計30Gyを照射し骨盤あるいは傍大動脈領域には8フラクションで15Gyを追加照射した.AP群ではDoxorubicin 60mg/m2,Cisplatin 50mg/m2の併用療法を21日間隔で8コース行った(Doxorubicinの最大投与量は420mg/m2までとされた).合計422例が登録され解析対象は396例(WAI群202例,AP群194例)であった.両群間の背景因子(人種,年令,進行期,組織型,分化度)には差が見られなかったが,治療完遂症例の割合はWAI群が84%であったのに対して,AP群は63%と少なくなっていた.生存曲線の比較では,AP群では進行の危険率は30%,死亡の危険率は34%減少していることが示され,WAI群と比較すると有意な予後改善が認められていた.しかし,毒性のために治療中止となった症例の割合はWAI群が3%にとどまっていたのに対してAP群では17%と多かった.また治療に要した期間は,WAI群は1.3ヶ月であったがAP群は5.1ヶ月であった.Grade 3/4の白血球減少(4%対62%),好中球減少(<1%対85%),消化管障害(13%対20%),心毒性(0%対15%),神経毒性(<1%対7%)はAP群に多く発現しており,治療関連死も4例対8例とAP群に多く起こっていた.
 再発卵巣癌に対する治療法に関する演題として注目されたのは,Randomised trial of paclitaxel in combination with platinum chemotherapy versus platinum-based chemotherapy in the treatment of relapsed ovarian cancer(ICON4/OVAR 2.2)である.本研究はplatinum sensitiveと考えられる再発卵巣癌患者を,taxenを含まないplatinum(carboplatinまたはcisplatin)based化療(P)群とpaclitaxel+platinum併用(TP)群に無作為割付を行い,予後を検討したものである.Intergroup trialとして合計802例が解析対象となった.P群にはcarboplatin単独が71%でCAP療法が17%含まれていた.TP群ではpaclitaxel+carboplatinが81%に投与され,paclitaxel+cisplatinの投与が10%であった.総投与コース数が6コース以上であったのがTP群は80%であったのに対しP群では69%にとどまっていた.進行・死亡による投与中止はTP群では47%であったがP群では61%に及んだ.Grade 2以上の神経毒性はTP群に多く(P 1%対TP 20%)見られたが,血液毒性はP群の方が多かった(P 46%対TP 29%).P群におけるprogression後のtaxen使用率は31%にとどまっていた.Follow upの中央値42ヶ月の時点で530例(66%)が死亡し717例(89%)が進行・再発した.生存解析ではTP群が有意に良好で,2年生存率が50%から57%と7%(95% CI:1%-12%)の改善が見られた(Hazard ratio=0.82(95% CI=0.69-0.97:p=0.023).以上よりplatinumに感受性のある再発卵巣癌症例にはplatinumとpaclitaxelの併用が有用であると結論された.
 これらの演題以外にも注目すべき研究をかいつまんで紹介するが,今年のASCO婦人科癌セッションの口演に選ばれた演題で注目すべき特徴は,7題の演題のうち4題がヨーロッパ,カナダのGCIGを含むIntergroup Studyであった点である.これは,彼らの10年間以上の努力により,1000例近い極めて大規模な比較試験が可能となった結果である.臨床研究はいうまでもなく将来の適切な治療指針の確立のために必要不可欠な手段であることを再認識し,日本の施設も総力を結集して新しいエビデンスの確立に取り組む必要がある.同時に,国際協力を通じてより迅速な研究の完結に力を注がなければならない.このような観点から我々の取り組みを紹介する.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3) 403-404, 2003


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