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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))

【シンポジウム3】
婦人科癌における緩和医療
緩和ケアにおけるナースの役割


田村 恵子
淀川キリスト病院がん看護専門看護師


 婦人科がんは他科領域のがんに比べて予後は比較的良好であるが,治療後の合併症としての排便・排尿障害,腸閉塞に伴う疼痛や嘔気・嘔吐,リンパ浮腫などが見られ,患者のQuality of Life(QOL)に与える影響は非常に大きい.また,がんが女性生殖器に発生することから,女性性の喪失,セクシュアリティやパートナーとの関係など身体的症状のみならず女性特有の悩みを抱えて,その後の人生を歩むことを余儀なくされる.このため,婦人科がんの治療においては,治療開始期より,患者の苦悩をTotal Painの視点からまなざす緩和ケアを組み込んだ医療の提供が必須である.
 婦人科がん患者への緩和ケアにおけるナースの主な役割は,以下のようである.
1.適切な疼痛マネジメントの実践
 がんの進行に伴って生ずるがん性疼痛や骨転移痛,腸閉塞に伴う疼痛,化学療法による末梢神経障害に伴う疼痛など,婦人科がんでは様々な疼痛が生じやすい.疼痛はそれだけで患者のQOLに大きな影響を与えるため,積極的に疼痛をマネジメントすることが必須である.ナースは継続的に患者の痛みの体験を聴き,症状を観察してアセスメントし,適切な治療が提供されるように協働する.また,疼痛緩和のためのマッサージ,温罨法,リラクセーションなどを行い,患者が自分に適した疼痛の対処法を身につけることができるように援助する.
2.リンパ浮腫のマネジメント
 婦人科がんでは,手術や放射線治療の後遺症や腫瘍それ自体によるリンパ系の循環障害がおこりやすくリンパ浮腫を発症することが多い.リンパ浮腫は難治性でしかも日常生活動作に大きな支障をきたす症状である.ナースはリンパドレナージなどのマッサージを日々のケアに取り入れて実践するとともに,患者がセルフケアできるように指導する.
3.女性性の喪失に伴う心理・社会的な支援
 がん治療に伴い,患者は女性性の喪失を体験し,自己の在り様やパートナーとの関係などについての対峙を余儀なくされる.また,変わりゆくボディイメージや機能的な変化をどう受け止めればよいのか,家族の中での役割を今後も遂行できるのだろうか,など心理・社会的な苦悩に直面する.ナースはこのように苦悩する患者に寄り添い見守る.さらに,必要に応じて問題解決に向けて支援や調整を行う.
4.転移・再発時のTotal Painの緩和
 転移・再発を伝えられた患者は,精神的に非常に大きな打撃をうけて動揺する.しかしこうした診断と共に,新たな治療の選択が提示され,十分に検討する時間のないままに患者は意思決定を求められることが多く,患者の苦悩は増すばかりである.ナースは治癒の可能性が低いという現実から生じる様々な苦痛を患者と共に見つめなおし,それらの苦痛を積極的に緩和する役割を担っている.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2) 137-137, 2009


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