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第112回学術集会(平成18年10月29日(日))

【ランチョンセミナー3】
3.生活習慣と周産期疾患


金山 尚裕
浜松医科大学産婦人科・教授


 生活習慣病は高血圧,糖尿病,動脈硬化(高脂血症)が代表的疾患である.これらに共通した病態として交感神経活性化,インスリン抵抗性,血管内皮障害,高脂血症などがあり,これらはクロストークしている.例としてインスリンが交感神経活性化作用を持つこと,高脂血症が血管内皮障害を惹起することなどが挙げられる.妊娠高血圧症候群,IUGR,切迫早産,血栓症などの周産期における主要な疾患においても交感神経活性化,インスリン抵抗性,血管内皮障害,高脂血症が重要な働きをしている.
 妊娠高血圧症候群は交感神経活性化,インスリン抵抗性,血管内皮障害(絨毛障害)がその発症に関係する.交感神経活性化,血管内皮障害(絨毛障害)は血管攣縮を引き起こし妊娠高血圧症候群の血管病変を形成する.交感神経から分泌されるノルエピネフリンやニューロペプチドYはこれらの疾患では著明な高値をとる.交感神経活性化,血管内皮障害(絨毛障害)を抑制するためには,ストレスの軽減,葉酸,アルギニンなどによる血管内皮防御対策がポイントである.また妊娠高血圧症候群ではしばしばインスリン抵抗性が見られる.インスリン抵抗性の改善には間食の制限やミネラル,ビタミンを充分に摂取しバランスのよい食習慣が大切である.有酸素運動はインスリン抵抗性を改善するので妊娠中の運動指導も妊娠高血圧症候群の予防対策として注目すべきである.
 IUGR児は将来生活習慣病になりやすいというBaker学説が証明されつつある.妊娠中の栄養,子宮胎盤循環がIUGRの発生と密接に関連するため,妊婦により一層適切な栄養と循環を指導する必要が出てきた.適切なカロリーと蛋白,ミネラル,ビタミンのバランスよい摂取および骨盤循環の改善が重要である.
 切迫早産の成因に交感神経が関与するものがある.交感神経が過剰に刺激されると子宮収縮が起こる.ストレス状態は交感神経刺激状態と考えられるが,精神的ストレスを多く受けている妊婦に早産率が高いことが報告されている.早産の予防に各種ストレスの軽減が大切である.早産の原因として細菌性膣症があり,細菌性膣症は乳酸桿菌が減少している病態である.我々は膣内乳酸桿菌とストレスの関連を検討したところストレス度が増すにつれ膣内乳酸菌が減少することを見出した.ストレスにより膣・頚管に炎症が起こり早産の要因になっていることが考えられた.
 妊産婦死亡の主要原因は本邦でも欧米諸国と同様深部静脈血栓症(DVT)→肺塞栓症が明確になってきた.血栓症の危険因子に血管内皮障害,肥満などが代表的で妊婦のDVT対策にはこれらの予防対策が重要である.血管内皮障害を抑制するためには葉酸,アルギニンなどの摂取を,肥満防止のためには動物性脂肪摂取の抑制等によるカロリー制限が肝要である.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(3) 258-258, 2006


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