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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))

【シンポジウムII】
1.再発子宮頸癌の治療


喜多川 亮
久留米大学医学部産科婦人科学教室


 本邦において,子宮頸癌罹患数は未だに婦人科悪性腫瘍の第一位をしめ,若年化も進んできている.さらに,5年生存率に過去25年間で変化はみられず.本邦でも徐々に導入されている化学放射線療法の予後改善効果はまだ明らかでない.よって,我々が病棟において再発子宮頸癌患者の治療方針に苦慮する状況は,今後も続くであろう.ここではエビデンスのレビューを含め,治療方針決定までのアルゴリズムを私見も交えつつ概説していきたい.
 再発子宮頸癌の予後は極めて不良であり,生存期間の中央値は全体で約1年,3年生存率は6%とされる.そのような対象への治療選択にあたっては,治療による予後改善効果の予測に加え,治療の侵襲および合併症・副作用による患者のQOL低下といった得失を十分に検討することが必須である.化学療法によって完全制御可能なほど子宮頸癌の化学療法感受性は高くなく,根治は望めない上に,予後改善効果が明らかでないため標準治療とはいえない.しかし,特に扁平上皮癌に対する放射線治療効果が非常に高いことは周知の通りであり,再発病巣が放射線照射で制御可能な範囲に限られる場合には,根治や長期生存も得られる可能性があり第一選択といえる.具体的には,放射線治療の既往がない骨盤内再発や傍大動脈リンパ節転移があげられる.
 放射線照射歴のある骨盤内局所再発に対しては骨盤除臓術をはじめとする手術療法が選択肢にあげられる.特に,腟断端の中央再発に対しては良好な治療成績の報告も多い.しかし,術後合併症の頻度や周術期死亡率も比較的高く,その適応に関しては各施設で十分に検討した上で,患者・家族への十分なインフォームドコンセントが必要となる.
 上記以外の症例に対しては,積極的治療として,全身治療である化学療法が選択肢にあがる.しかし,再発患者に対する治療目的の第一は症状緩和とそれによるQOL向上であり,さらに生存期間延長の可能性までをも期待したいが,それを示すエビデンスは十分ではない.よって,実地臨床においては緩和治療も選択肢においたうえでのインフォームドコンセントが求められる.そこで,少なからず毒性を有する化学療法の対象の選別は非常に重要となる.万一,化学療法が無効に終わった場合でも,患者には死を受け容れながら家族を含む周囲の人々に別れを告げる肉体的・精神的ゆとりが残されることが必要であろう.よって,全身状態が良好かつ臓器機能が保たれているという最低限の必要要件に加え,1.病巣の部位,2.病巣への放射線療法の既往,3.病巣に伴う症状の強さ及び今後の症状の予測,などが適応決定に必要な要素となる.たとえば骨転移は,疼痛のみならず骨折による急激なQOL低下も想定し,浸潤の程度によっては他に病巣があったとしても骨病巣への緩和的放射線照射を優先した方がいい場合もある.
 化学療法のレジメンとしてはシスプラチン(P)を中心とした単剤もしくは2剤併用療法が推奨される.特に,タキサン系薬剤との併用療法への期待は大きく,米国GOGはパクリタキセル(T)/P療法を含むP併用療法4群間のランダム化比較試験を実施中である.本邦においては,今までほとんどエビデンスが示されてこなかったカルボプラチン(C)とTとの相性の良さに注目し,TP療法とTC療法を比較するランダム化比較試験を実施中である.これらの結果は,再発患者のみならず,初発子宮頸癌患者に対する集学的治療においても有用な知見を与えるものと期待される.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3) 254-254, 2007


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