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第114回学術集会(平成19年10月14日(日))

【シンポジウムIII】
1.子宮腺筋症の保存的手術療法


西田 正人, 高野 克己, 新井 ゆう子, 小曽根 浩一, 岡根 真人
独立行政法人国立病院機構霞ヶ浦医療センター


 女性の晩婚化という社会現象を背景にして,妊孕性の温存を希望する子宮腺筋症患者が増加している.
 当院では5年ほど前から子宮腺筋症の保存的手術療法を開発し,試みてきた.2005年10月に先進医療に認定されてから患者が増え,現在では1ヶ月に10例ほどのペースで手術を行っている.
 手術症例は本年6月末現在で161例である.年齢は14歳から49歳に分布して平均36歳,産科歴は未妊婦が93例,経妊婦が48例,経産婦が20例であった.既婚婦人が99例,未婚女性が60例,離婚後の女性が7例であった.主訴は全例月経痛で,既婚で挙児希望のある症例は82例であった.49例に何らかの手術やUAEの既往があった.
 術式は全て開腹で,初期には腺筋症病巣を筋腫核出のように切除(古典的術式)していたが,早期に再発する症例を経験してから,前壁か後壁に限局する腺筋症に対しては内膜を含めて病巣を完全に切除し,残された健常な子宮で新たに子宮を形成する方法(Type I術式),全周性の腺筋症に対しては,子宮を非対称性に縦断し,病巣を切除後単一化する方法(Type II術式)を行っている.
 病巣の局在は,瀰漫性で後壁が83例,瀰漫性で前壁が26例,瀰漫性で底部3例,結節性で一部嚢胞を伴うもの6例,結節性で嚢胞を伴わないもの2例,全周性41例であった.
 術式はType I術式106例,Type II術式32例,古典的術式20例,その他3例であった.
 切除器具は当初から高周波切除器を用いており,組織の切断にはナイフ状の切除器を,組織の切除にはリング導子を用いている.
 腺筋症の病巣は筋腫のように正常筋層との境界が鮮明でなく,腺筋症部分を正常筋層から分離して鈍的に核出することはできない.しかし,病巣を遺残無く切除するためには正常筋層と病巣を識別しなければならない.この時に視診よりも触診で識別するとわかりやすい.また,高周波切除器の切除面の色調からも正常筋層と腺筋症病巣は識別できるようになった.
 手術時間は平均142分,出血量は平均530g,摘出組織量は平均179gであった.術式別ではType I術式の平均手術時間が132分,平均出血量が400g,平均摘出重量が147gであったのに対し,Type II術式ではそれぞれ170分,854g,312gであった.術中,術後を通じて大きなトラブルはなく,通常術後9日目に退院している.
 術後に月経が再来し術前後の月経痛が比較できた111例においては,月経痛をVASで表すと,術前の平均9.3が術後平均1.3へと改善した.また,過多月経に関しても,全例で軽減した.
 術後1年以上を経過した74例中9例(12.2%)に再発が認められ,1例は子宮を摘出し,1例は再手術した.再発した9例の術式は古典的術式4例,Type I術式3例,Type II術式1例,その他の術式1例であった.
 術後妊娠例は5例で,3例で生児を得,2例は流産に終わった.妊娠率は術後半年以上経過した40歳未満の挙児希望患者58例中8.6%となる.
 腺筋症核出術は患者満足度の大変高い手術である.高齢の独身女性が何故子宮を摘出しないのかという医療者側の論理は患者には通用しない.今後,ますます増加すると予想されるこの疾患に対応するために,術式の更なる改善と普及は急務であろう.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(3) 258-258, 2007


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