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【症例報告】
妊娠悪阻の経過中に腸炎を契機に敗血症をきたした症例


平岩 由紀子, 松永 竜也, 小平 博, 今井 一夫
横須賀市立市民病院産婦人科, 今井ウイメンズクリニック


 妊婦の敗血症は,心疾患などの基礎疾患があるものや前期破水・絨毛羊膜炎に関連して起こることが知られている.しかし,今回我々は器質的疾患のない妊婦が,突然腸炎を契機に敗血症・DICをきたした症例を経験したため報告する.【症例】23歳の1経産婦である.既往歴としては大量服薬にて入院した既往がある.近医にて妊娠と診断された後,悪阻のため実家にて静養していた.症状悪化により当院救急外来を受診し同日入院した.入院時は妊娠9週,尿ケトン(2+),悪心・嘔吐と全身倦怠感を認めるがその他に異常認めなかった.補液治療を行っていたところ,入院後4日目に突然39度台の発熱と水様性下痢が出現した.DICも呈したため,抗生剤や血液製剤等使用した集学的治療を行った.静脈血培養よりEnterobactor cloacaeが検出され抗生剤を変更し,発症後1週間で解熱および臨床検査の改善を認めた.心臓及び腹部超音波断層法を行ったが,器質的疾患は認めなかった.その後,全身状態改善し退院となった.入院中切迫流産の兆候は見られず,退院時の超音波検査にて胎児の発育は週数相当で胎児心拍も良好であった.退院後は分娩予定であった前医での経過を希望されたため転院した.【結語】基礎疾患のない妊婦が突然予期せぬ敗血症をきたした症例を経験した.重症妊娠悪阻ではbacterial translocationが起こる可能性があることがわかった.

Key words:septicemia, pregnant woman, bacterial translocation, enterobactor, hyperemesis gravidarum

日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(1) 41-45, 2010


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