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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))

【教育セミナー4】
HRT新ガイドラインのポイント


久保田 俊郎
東京医科歯科大学大学院生殖機能協関学


 卵巣機能の低下を伴うエストロゲンの不足を補充し,精神・身体機能の改善・維持を目的に行われるホルモン補充療法(HRT)は有効な治療法である.しかしWHI中間報告でその副作用が大々的に報道されて以来,副作用が強調されるあまり本来のHRTのメリットさえ軽視され,適切な対象が選択され正しい使用法が行われているか否かは疑問であった.このような状況の中で,現時点におけるHRTに対する認識とエビデンスを整理し,安心してHRTを行えることを目的として,日本産科婦人科学会では日本更年期医学会と合同で2009年にHRTガイドラインを作成した.
 本ガイドラインでは,HRTが症状の緩和や疾患の治療のための薬剤投与であると同時に,予防薬・健康増進薬として使用することも可能であると明記した点が注目される.HRTは,更年期症状特にホットフラッシュ・発汗などの血管運動神経症状の緩和,萎縮性腟炎・性交痛など泌尿生殖器症状の改善にきわめて有用(A)で,骨吸収の抑制と骨折の予防に対する効果もきわめて高く評価(A)されている.更年期の抑うつ症状,脂質異常症の治療,皮膚萎縮の予防に対しても有用性が高い(B)が,動脈硬化症予防やアルツハイマー病予防の効果に対する評価は必ずしも高くはない(C).
 HRTガイドラインでは,特に60歳以上の女性においてHRTを新規に開始する場合にはメリットよりもリスクが高まる可能性が指摘され,有益性と有害性を十分検証すべきと提言している.また5年以上のHRTを行う場合には,乳癌のリスクの増加に関する情報を患者に伝え,インフォームドコンセントを再取得することを勧めている.本ガイドライン中にはHRTによる治療開始までのアルゴニズムが示され,この治療を希望する女性の場合投与を避けるべき禁忌症例や慎重投与すべき疾患を明確にしている.さらに使用薬剤の種類と特徴を挙げ,エストロゲンの通常量と低用量の考え方や,経口剤と経皮剤という投与ルートの違いによるリスクとベネフィットの違いなどにも言及している.HRTの管理に関しては投与前,投与中,投与後に分けて記載されている.投与前の検査は,投与により増悪する疾患をもつ症例を除外することを目的とし,検査項目は必要最小限にとどめている.また,検査回数に関しては投与中は毎年とし,投与中止後も1から2年ごとに婦人科検診と乳房検診を行うことを推奨している.
 HRTを行う際には,そのリスクを患者に十分説明しベネフィットとのバランスを適切に評価して,HRTが効果的と判断される場合に必要量を必要期間投与することが重要である.その場合HRTガイドラインには,生活習慣(食事,喫煙,飲酒,運動など)の適正化を同時に考慮すべきであると記載されていることも忘れてはならない.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3) 302-302, 2010


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