関東連合産科婦人科学会
会員ログイン 代表挨拶
総会・学術集会
学会誌
定款
公告
利益相反
役員構成
事務局案内
求人施設一覧
関連リンク

 関東連合産科婦人科学会会誌 オンラインジャーナル

<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る

第122回学術集会(平成23年10月30日(日))

【教育セミナー2】
産婦人科医のための法的リスクマネジメント2011


田邉 昇
中村・平井・田邉法律事務所


 医療訴訟は平成16年まで10年間で倍増の勢いで増加していたが,ここ数年はサラ金に対する過払い金訴訟に弁護士が流れて減少傾向にあった.しかし,大手サラ金会社の破綻と,司法試験改革による弁護士の増加によって昨年は再び増加に転じている.  産婦人科は訴訟件数でも各診療科では3〜4番目に多く,医師あたりの訴訟件数は診療科中最高である.  産科の医療訴訟で多い類型は帝王切開のタイミングの遅れを指摘して脳性麻痺になったのはそのせいであると主張するものである.その判断には鑑定が用いられることが多かったが,従前は一部の独自の見解を有する鑑定人が過重な後知恵的知見から医師の過失を指摘するケースが多く,最近では従前にそのような鑑定をしたことから原告側弁護士に見いだされた者など,鑑定家ともいうべき一群の医師らがいて,原告側の弁護士に雇われて,こじつけ,後知恵的なトンデモ意見書を量産してくる現状である.  鑑定以外でも,添付文書の内容が医師の診療行為を金科玉条的に拘束するという最高裁平成8年1月23日判決など,裁判所の診療上の問題に対する判断は明らかに医療破壊とも言うべき様相を呈している.  また,緊急の分娩現場に対して異常な説明義務を求めるものなど,医学的に問題のない判断を行ったケースでも,一部偏向裁判官を中心とした裁判所の医師への攻撃は非常に強く産科医不足の主因としての医療裁判は大きな社会問題ともなっている.  また,産婦人科手術や分娩の際の患者や妊婦の死亡は,往々にして民事訴訟事件のみならず刑事告訴されるなどして刑事事件になることも多い.また,病院側が誤った判断から安易に警察に異状死体(医師法21条1項)として通報することもよくあるようだが,医師法上の異状死体の解釈に誤解があると思われる.異状死体とは外表面に明らかに異常な所見のある死体をいい,医療過誤があったり原因不明だから警察に届ることを義務づけるものではない.  産婦人科医は学会や医会,医師会などの組織として司法検討委員会を置くなどして常時裁判所の判決を監視して誤りを糺し続けるべきである.また,説明義務なども,患者の真に知りたいことをもっともよく知る立場の医師が,きちんと根拠となる調査を行い,裁判所の暴走を阻止する必要がある.  刑事事件を含め,医師は診療行為に関して広範な免責を要求するべきである.国家賠償法は厚労省の官僚や警察官,検察官に直接の被害者に対する絶対的免責を規定し,故意重過失以外は免責している.最高裁昭和57年判決は裁判官に対しては,不当な目的を持ち,明らかにその権限を逸脱したような特殊な場合以外は,裁判官はもとより国家についても免責しており,医師も同等の免責を受けて当然であろう.


関東連合産科婦人科学会誌, 48(3) 271-271, 2011


一般社団法人関東連合産科婦人科学会事務局 〒102-0083 東京都千代田区麹町4-7 麹町パークサイドビル402 株)MAコンベンションコンサルティング内
TEL:03-3288-0993 FAX:03-5275-1192 E-mail:kantorengo@jsog-k.jp
Copyright (C) 一般社団法人関東連合産科婦人科学会