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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))

【ワークショップ1】
早期卵巣がんに対する臨床試験の現況と今後の展望


熊谷 晴介
独立行政法人国立病院機構小倉医療センター産婦人科


 本邦では,卵巣がん(上皮性悪性卵巣腫瘍)のうち早期症例(FIGO I,II期)の割合はおよそ半数で,また進行症例と比べると明らかに予後良好である.早期症例は一般的に,再発のリスクによりlow risk群(Ia,Ib期かつGrade1,(明細胞癌を除く))とhigh risk群(I期Grade2,3,II期,明細胞腺癌)に分類される.Low risk群は5年生存率が90%以上と予後良好であり,ガイドライン上でも術後化学療法の省略を許容している.しかし,これらの対象となり得るのは全卵巣がんの約9%にすぎず,high risk群に対しては進行症例同様,標準術式に加えて化学療法を行うのが標準的治療とされている.従って,根治性を損なうことなくいかに縮小治療の適応を拡大させられるかが現在の早期症例に対する治療の大きな課題の一つと考えられる.過去に行われた早期症例を対象とした治療に関する臨床試験は少数・小規模なものが多いが,その中で代表的なRCTとしては術後化学療法の省略の可能性に関する検討(ICON1,EORTC-ACTION)や,術後化学療法のサイクル数の減少の可能性に関する検討(GOG0157,0175)などが挙げられる.ICON1,EORTC-ACTIONは,術後にプラチナ製剤を主体とした初回化学療法施行群と非施行群の比較で,その結果化学療法施行群が有意に予後良好であった.しかし,対象症例の中に十分なstaging laparotomyが施行されなかった症例が多く存在し,EORTC-ACTIONでのサブセット解析やその後の複数のレビューでの解析において,staging laparotomy未施行群においては化学療法施行群が有意に予後の改善を認めるも,staging laparotomy施行群では予後に差は認められなかった.GOG0157は,早期症例high risk群に対する術後TC療法3サイクル施行群と6サイクル施行群での比較で,結果としては両群間で5年再発率に有意差は認められなかった.早期症例に対する初回化学療法の施行回数はガイドラインでは3〜6コースと記載されているものの明確なエビデンスがないのが現状で,これらRCTの結果を総括すると,早期症例に対しても術後化学療法の有用性が示唆されている一方で,サイクル数の減少の可能性も示唆され,また特にI期症例に関しては組織型に関わらずstaging laparotomyを含めた完全手術を施行した症例に対しては術後化学療法を省略できる可能性が高いと考えられる.但し,staging laparotomyを厳密化した対象群でかつ現在の標準レジメンであるタキサン+プラチナ製剤でのprospective studyは存在しないため,今後実施予定のJGOG3020試験の結果が期待される.また,手術に関しては現在Ia期grade1症例にのみ適応とされている妊孕性温存手術の適応拡大の可能性を支持する報告もあるが,前述の報告を鑑みると,縮小手術においても正確な進行期決定が必要と考えられる.系統的後腹膜リンパ節郭清術を行ったpT1期症例のリンパ節転移率は5〜25%との報告もあり,後腹膜リンパ節の取り扱いに関しては術中の視診や触診のみでは不十分の可能性も否定できず,系統的な郭清/生検が必要である.そもそもリンパ節郭清の治療的意義は依然不明確で,またセンチネルリンパ節の同定に関してもエビデンスが確立されていない.これらの現状を踏まえつつ,手術の根治性やstagingの精度を損なうことなく縮小手術の適応拡大を検討していく必要がある.本セッションではこれら早期卵巣がんの治療に関するこれまでの臨床試験の経緯,問題点等を概説し,より質の高い臨床試験を構築するためのヒントを見いだしていければと考えている.


関東連合産科婦人科学会誌, 49(2) 273-274, 2012


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