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【症例報告】
帝王切開時に発見され悪性腫瘍との鑑別が困難であった卵巣脱落膜変化の一例


佐藤 玲南, 望月 昭彦, 野村 可之, 助川 明子, 佐藤 美紀子, 杉浦 賢, 宮城 悦子, 榊原 秀也, 平原 史樹
横浜市立大学附属病院産婦人科


 異所性脱落膜変化は子宮内膜症組織などに妊娠中のホルモンが作用することにより生じ,分娩後退縮し,卵巣に好発する.術前診断および肉眼所見上,卵巣悪性腫瘍と非常に類似した所見を呈するため,鑑別と治療方針が問題となる.今回我々は,以前に子宮内膜症を指摘されたことはなく,また妊娠中にも認識されずに帝王切開時に偶然発見され,止血と病理診断のために付属器切除術に至った卵巣脱落膜変化の症例を経験したので報告する.症例は37歳,0経妊0経産.妊娠38週2日に初産・骨盤位・前期破水のため帝王切開術を施行した際,子宮後壁と癒着する径7〜8 cm程度の右付属器腫瘤を認めた.腫瘤は易出血性であり止血困難であること,卵巣悪性腫瘍が否定できないことより,右付属器切除術を施行した.病理組織学的検査の結果は広範な脱落膜変化を伴った卵巣であった.卵巣脱落膜変化は,術前診断においては,増大した腫瘤,充実性部分の存在,血流が豊富という点で悪性腫瘍と類似し,また肉眼的にも鑑別が困難なことがある.本症例では,腫瘤は術前には認識されておらず,術中所見のみでの鑑別となったが,子宮と強く癒着し,全体に凝結塊を伴う易出血性の腫瘤であり,肉眼的には悪性腫瘍を強く疑った.画像診断において異所性脱落膜変化を疑い,経過観察とした症例報告も散見されるが,現時点では病理組織以外には鑑別の根拠となる条件として不十分である.悪性腫瘍と卵巣脱落膜変化を鑑別することは今後の課題であるが,帝王切開時に悪性腫瘍を疑う卵巣腫瘤を認めた際,卵巣脱落膜変化を鑑別診断の1つとして認識しておくことは重要である.

Key words:Decidual change, Cesarean delivery, Pregnancy

関東連合産科婦人科学会誌, 49(4) 555-559, 2012


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