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【症例報告】
巨大卵巣腫瘍茎捻転の1例


市村 建人, 入江 太一, 永田 のぞみ, 史 周霞, 加藤 理恵子, 飯塚 真, 林 雅綾, 濱田 佳伸, 榎本 英夫, 坂本 秀一, 林 雅敏
獨協医科大学越谷病院産科婦人科


 卵巣腫瘍の茎捻転は,婦人科急性腹症の代表的疾患のひとつであり,しばしば経験する.しかし,巨大な卵巣腫瘍の茎捻転は稀である.今回我々は30 cmを超える巨大卵巣腫瘍が捻転し,病理検査において悪性腫瘍と診断された症例を経験した.症例は48歳女性.2経妊2経産.腹痛を主訴に受診し,腹部CTで30 cmを超える巨大卵巣腫瘍を認めた.緊急手術を施行したところ,左卵巣由来の巨大な腫瘍が450°茎捻転していた.病理検査では,粘液性囊胞腺癌であった.諸家の報告では,卵巣腫瘍は腫瘍径が5〜10 cmのものが最も捻転を起こしやすく,茎捻転全体の2/3以上を占める.一方,20 cmを超える巨大な卵巣腫瘍では可動性が制限され,茎捻転を起こすことは稀とされる.また,腫瘍の組織型においても,悪性腫瘍は稀とされる.今症例のように30 cmを超えた悪性卵巣腫瘍の茎捻転は,極めて稀と考えられた.また,当院における2007年1月から2011年12月までの卵巣腫瘍茎捻転症例の検討でも,巨大卵巣腫瘍,悪性卵巣腫瘍の茎捻転は稀であった.今回の経験より,卵巣腫瘍が巨大であっても,腹痛を伴う場合は,茎捻転を念頭に入れるべきと考えた.

Key words:Ovarian tumor torsion, Giant ovarian tumor

関東連合産科婦人科学会誌, 50(1) 99-104, 2013


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