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第125回学術集会(平成25年6月15日(土),16日(日))

【シンポジウム】
当院の腹腔鏡下手術患者に対するERAS(Enhanced Recovery After Surgery)プロトコールの検討と導入〜術前経口補水に焦点をあわせて〜


地主 誠
順天堂大学産婦人科


【緒言】近年,手術ストレスや合併症の発生を軽減し,術後早期回復をめざすERASプロトコールが脚光を浴びている.このプロトコールでは習慣的な術前消化管前処置を廃止し,手術直前まで炭水化物飲料の摂取をし,絶飲食期間の短縮を行う事で,精神的不安定,口渇,空腹感から生じるストレスやインスリン抵抗性を軽減し,術後早期回復を達成する事を目的としている.近年の女性ライフスタイルの変化により,早期回復を希望する事が多い婦人科領域においてもこのプロトコールは有用とされ,その報告が増加してきている.当院でもこれまで,良性疾患に対して早期回復を目的としたさまざまなアプローチを行っており,その一つとして1994年より腹腔鏡下手術とクリニカルパスを導入し,そのアウトカムの評価と改善を繰り返し行ってきた.これらの改善と前述したERASプロトコールの概念は酷似しており,今回ERASプロトコールを参考に更なる改善点を抽出し,術前経口補水を開始した. 【方法と対象】当院では,2012年5月より腹腔鏡下手術で術前経口補水を行っている.方法は,手術当日の起床時より経口補水液(OS-1®)を500mlとアルギニン滋養飲料(アルジネードウォーター®)200mlを摂取し,手術約2時間前までclear waterを制限なく摂取可能としている.更に,術前経口補水と術後の嘔吐に対してのアンケートを行い,周術期のアンケートに対する回答のあった75例と術前経口補水を行う以前の周術期経過に対して比較・検討を行った. 【結果】術前経口補水を施行した75例全例で誤嚥などの周術期合併症は認めなかった.予定飲水量を完遂できなかったのは5例(6.7%)のみであり,5例ともOS-1の味に対する問題であった.アンケートの結果は,OS-1は50人(67%)で美味しく感じ,70人(93%)で全量摂取.アルジネードウォーターでは67人(89%)で美味しく感じ,75人全員で全量摂取していた.経口補水を行う事で,57人(76%)で手術に対する不安を軽減できたと感じ,45人(60%)が次回の手術があれば補水を希望した.更に,術前経口補水を開始する以前の腹腔鏡下手術では35%で嘔気により術後の食事摂取が困難であったが,経口補水開始後は12人(16%)のみと減少していた. 【考察】術前経口補水開始より周術期の合併症の発生は認めず,検討症例は少ないものの良性疾患への腹腔鏡下手術において安全に施行できる可能性が示唆された.また,アンケート結果より,術前経口補水に対する良好な感想が得られ,手術に対するストレスの軽減や術後嘔気を軽減し,術後早期回復に有効であったと考えられた.


関東連合産科婦人科学会誌, 50(2) 303-303, 2013


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