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<< 学会誌へ戻る 【緒言】卵巣成熟嚢胞奇形腫は，卵巣胚細胞腫瘍の良性腫瘍であり，卵巣腫瘍の中でも最も頻度の高い腫瘍である．また約2〜3％に悪性転化が観察され，悪性転化した場合は腸管への浸潤・瘻孔形成は珍しくない．しかし，良性卵巣腫瘍と腸管との瘻孔形成は極めて稀であり，報告も少ない．今回我々は，炎症性に直腸瘻を形成した卵巣成熟嚢胞奇形腫の1例を経験したので報告する．【症例】43歳，0回経妊0回経産．骨盤内腫瘤を指摘され，当科を受診した．経腟超音波断層法上，直径10cmの血流に乏しい左付属器腫瘍で，hair ball様の像を認めた．MRI上，脂肪抑制像で低信号を示した．腫瘍マーカーはCA125：59 U/ml，SCC：2.0ng/mlと軽度高値を示すのみだった．以上より悪性は否定的であり，左卵巣皮様嚢腫の術前診断だった．しかし，頻回の下痢に対して下部消化管内視鏡を施行したところ，直腸壁左側に直径1.3cmの粘膜下腫瘍があり，同部位に白色の排液と毛髪を認め，瘻孔形成を疑った．一部悪性転化も疑われるため早期の開腹手術を施行したところ，左卵巣腫瘍と周囲が炎症性に癒着しており，腫瘍内容は毛髪と茶褐色泥状物質が混在し，糞臭を伴っていた．直腸に直径1cmの瘻孔形成を認めた．術中迅速病理診断で悪性所見は認めず，左付属器切除と高位前方切除術を施行した．最終病理診断は左卵巣mature cystic teratomaで，切除した直腸に憩室炎などの所見は認めなかった．【結語】我々は，炎症性に直腸瘻を形成した卵巣成熟嚢胞奇形腫の1例を経験した．今回の瘻孔形成の原因として，卵巣からの圧迫と炎症が直腸壁まで波及したと示唆される．婦人科良性卵巣腫瘍でも本症例のようなことが起こることに留意したい． 関東連合産科婦人科学会誌, 51(2) 298-298, 2014 |
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