|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
【原 著】
人魚体シークエンスの1例
豊島 壮介1), 吉野 一枝1), 萩野 大輔1), 香山 文美1), 日比野 健一2), 香川 二郎2)
1)藤枝市立総合病院産婦人科 2)藤枝市立総合病院小児科
人魚体シークエンスは,胎生3週頃に胚子の尾側正中部の原基が欠損することによって起こると考えられている奇形で,下肢の癒合,両側腎の無(低)形成,鎖肛などを特徴とする.その出生前診断には,羊水過少や単一臍帯動脈などの超音波所見が役立つと言われている.今回我々は,妊娠中に超音波検査にて消化管,腎,下肢の異常が認められたものの確定診断に至らず,前期破水,胎児仮死のため緊急帝王切開を施行した人魚体シークエンスの1例を経験した. 症例は23歳の初産婦.子宮内胎児発育遅延,胎児腸管拡張の疑いにて妊娠32週4日に近医より当科に紹介された.妊娠33週6日に性器出血,下腹部痛を認め,切迫早産の診断にて塩酸リトドリンの点滴を開始.超音波検査では腎,膀胱を認めず,下肢二本を確認できなかった.妊娠34週0日,血性羊水の流出を認め,NSTにて変動一過性徐脈が頻発したため,胎児仮死の適応にて緊急帝王切開手術を施行した.児は性別不詳で,両下肢の癒合を認め,人魚体シークエンスと診断された.児はNICU管理となったが,食道・上部消化管閉鎖,腎無形成を認め,日齢2日に呼吸不全のため死亡した.本症例では,稀な胎児奇形の出生前診断の難しさが課題であると思われた.
Key words:Sirenomelia sequence, Caudal regression syndrome, Prenatal diagnosis
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(1)
9-12, 2001
|