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第110回学術集会(平成17年10月15日(土),16(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍(1) 卵巣甲状腺腫性カルチノイドの1症例
大淵 紫, 鈴木 康伸, 佐川 泰一, 齊藤 俊雄, 林 敏, 清川 尚
船橋市立医療センター産婦人科
卵巣甲状腺腫性カルチノイド(strumal carcinoid)は,比較的稀な腫瘍で,本邦の報告では,卵巣原発カルチノイドは全カルチノイドの約1.3%,卵巣腫瘍全体の0.1%以下である.胚細胞腫瘍(germ cell tumours)の中でも単胚葉性および高度限定型奇形腫(monodermal and highly specialized teratomas)の群に分類される.本邦の報告では,その中でも甲状腺腫性カルチノイドの頻度が高い.今回,我々は術後に本症と診断された症例を経験したので,報告する. 症例は,37歳,2経妊2経産,便秘を主訴に近医を受診し,卵巣腫瘍の診断で当センター紹介初診となった.術前の画像診断では,右付属器領域に約9 cm大の多房性腫瘍を認め,脂肪成分も含み,卵巣成熟嚢胞性奇形腫の診断で手術を施行した.術中の迅速組織診断では,カルチノイドの疑いであった.開腹所見にて明らかなリンパ節腫大,腹腔内播種像は認めず,洗浄腹水細胞診にても異型細胞を認めなかったため,右卵巣摘出術を施行し,それ以上の拡大手術は行わなかった.術後の病理組織学的検査結果は,一部成熟嚢胞性奇形腫を合併した甲状腺腫性カルチノイドと診断された. 卵巣甲状腺腫性カルチノイドは,術前診断が困難な一方,典型的な成熟嚢胞性奇形腫に合併し,頑固な便秘を呈する症例も少なくない.鑑別疾患として本腫瘍の存在を念頭に置くことも必要であると考えられる.今回の症例に対し,免疫染色組織所見,電子顕微鏡像を合わせて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(3)
320-320, 2005
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