|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
【原 著】
Paclitaxel,Nedaplatin併用化学療様法が奏効した卵巣原発癌肉腫の1例
鈴木 啓太郎, 梅原 永能, 塩塚 重正, 舞床 和洋, 川嶋 正成, 西井 寛, 渡辺 明彦, 落合 和彦, 田中 忠夫*
東京慈恵会医科大学附属青戸病院産婦人科 東京慈恵会医科大学産婦人科学教室*
卵巣原発癌肉腫は原発性卵巣癌のうち1%以下をしめる比較的稀で,予後不良の疾患である.今回我々はPaclitaxel,Nedaplatin併用化学療法が奏効した卵巣原発癌肉腫の1例を経験したので報告する.症例は53歳,2経妊2経産,平成10年8月より右下腹部痛を主訴に他院受診.画像診断にて7×8cm大の横行結腸腫瘍を認め,9月16日横行結腸部分切除術が施行された.術後病理組織診断にて転移性明細胞腺癌を認め,また左付属器に腫瘤を認めたことから,精査加療目的にて当科紹介受診となった.11月10日内性器全摘術を施行.漿液性腹水約1,000mlおよび腹壁に2cm径以下の多数の腹膜播種性の転移を認めた.触診上,2cm径以上の傍大動脈リンパ節の腫大を触知し,また左卵巣は7×8cm大に腫大していた.組織学的に左卵巣原発癌肉腫(上皮性悪性腫瘍成分:明細胞腺癌,肉腫成分:低分化型平滑筋肉腫)FIGO IIIc期と診断した. また術中採取した腹水中に明細胞腺癌を検出した.Paclitaxel(180〜210mg/m2),Nedaplatin(75mg/m2)にて術後化学療法を5コース施行したところ,腹部CT上再発所見を認めず,術前162u/mlであったCA125値も7u/mlと低下したため,平成11年4月30日に効果判定として,膣断端部腫瘍切除術および骨盤内〜傍大動脈リンパ節郭清を施行した.肉眼的に腫瘤は認めず,摘出標本にも悪性所見を認めなかったが,腹腔内洗浄細胞診にてclassV(明細胞腺癌)を認めた.外来にてPaclitaxel 60mg/m2,Carboplatin(AUC3)の静脈内投与を3週間を1コースとして5コース施行した.術後1年7か月経過した現在に至り,腫瘍マーカー,画像診断上も再発を認めず経過観察中である.
Key words:Ovary, Carcinosarcoma, Chemotherapy
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(1)
13-17, 2001
|