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【原 著】
CA125,CA602高値を伴い悪性腫瘍との鑑別が困難であった巨大卵巣莢膜細胞腫によるMeigs症候群の1例
金田 佳史, 浅岡 健太郎, 豊島 究, 伊藤 仁彦, 西野 るり子, 北井 啓勝
埼玉社会保険病院 産婦人科
胸水を伴うMeigs症候群は術前に良悪性の鑑別に苦慮することが少なくない.今回我々はCA125,CA602高値であり悪性腫瘍との鑑別が困難であった巨大卵巣莢膜細胞腫によるMeigs症候群の症例を経験した.患者年齢は64歳である.腫瘍は硬く表面凹凸不整を示し,骨盤腔から胸骨下にまで及んでいた.腹部骨盤CTでは癌性腹膜炎を伴う卵巣癌を疑った.胸部CTでは両側胸水貯留を認めたが肺野への転移は認めなかった.術前腫瘍マーカーはCA125 917.1 U/ml(WNL<35),CA602 1,000 U/ml(WNL<63)であった.腹水・胸水穿刺細胞診共に陰性ではあったが強く悪性を疑った.腫瘍吸引生検はfibrous tumorであった.患者への十分な説明の後,paclitaxelとCBDCAの併用療法を1コース施行したが腫瘍マーカー値の低下は見られず,腹部骨盤MRでも腫瘍の縮小は認めなかった.手術開腹所見では腫瘍は左卵巣原発であった.術中迅速病理組織検査は莢膜細胞腫あるいは線維腫であったため,術式は腹式単純子宮全摘術+両側付属器切除術にとどめた.永久組織標本は左卵巣原発莢膜細胞腫であった.腫瘍組織の抗CA125抗体および抗CA602抗体を用いた免疫染色は共に陰性であったが,卵巣表面の中皮および卵管の腺上皮は陽性を示した.術後,胸部単純X線写真上,胸水は消失しCA125,CA602ともに正常域に低下した.
Key words:Thecoma of ovary, Meigs syndrome, CA125, CA602
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(1)
37-42, 2001
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