|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
【原 著】
卵巣腫瘍を呈した悪性リンパ腫の1例
佐々木 康, 石川 克美, 森岡 幹, 星野 裕子, 岩崎 信爾, 北條 智, 永谷 みどり, 本道 隆明, 亀田 省吾, 小川 公一
亀田総合病院産婦人科
悪性リンパ腫が卵巣腫瘍をきっかけに発見されることは極めて稀である.今回我々は,卵巣腫瘍を呈した悪性リンパ腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は76歳,4回経妊1回経産.平成7年12月14日,下腹部腫瘤の診断にて近医より当科に紹介された.初診時全身に浮腫を認め,表在リンパ節の腫脹は触知できなかった.超音波断層法,CT,MRIより,腫瘤は17×12×9 cm大の内部不整,分葉状の充実性卵巣腫瘍であり,多発リンパ節転移(腹部大動脈節,腸骨動脈節),右側水腎症を認め,第4腰椎骨転移が疑われた.腹水は認められなかった.子宮腟部及び子宮内膜細胞診,尿細胞診,上部消化管内視鏡検査,大腸内視鏡検査では特に異常を認めなかった.腫瘍マーカーは,CA-125(360 U/ml),SLX(44 U/ml),LDH(3,438 IU/ml)が異常値を示した.血液検査では,貧血,低蛋白血症,炎症所見(CRP陽性),軽度凝固系異常を認めた.以上より卵巣悪性腫瘍と診断,1月24日開腹術を施行した.右卵巣は超新生児頭大に腫大し,子宮及び左側付属器と一塊となっており,少量の血性腹水を認めた.右後腹膜腔には,傍大動脈から腸骨動脈領域にかけて連続したリンパ節腫大を認めた.術中迅速病理診断でdysgerminoma疑いと診断され,腹式単純子宮全摘術・両側付属器切除術を施行した.術後病理組織診断は悪性リンパ腫(diffuse large cell type,B cell)であり,血液内科転科後CHOP療法が施行された.
Key words:Ovarian tumor, Malignant lymphoma
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(4)
377-380, 2001
|