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【原 著】
子宮筋腫術後に顕症化した結核性腹膜炎
沖野 恵子, 米山 剛一, 武内 務, 平泉 良枝, 三浦 敦, 土居 大祐, 太田 雄治郎, 明楽 重夫, 荒木 勤
日本医科大学産婦人科学教室
結核患者は近年増加傾向にあるといわれており,婦人科領域における性器結核感染症は臨床診断が困難なものも少なくない.今回,子宮筋腫術後に顕症化した結核性腹膜炎の一症例を経験したので報告する. 症例は47歳,3回経妊3回経産.平成12年7月7日,不正性器出血を主訴に当科を受診した.子宮筋腫の診断にて腹腔鏡補助下腟式単純子宮全摘術を施行した.この際,両側付属器に明らかな異常は認めなかった.術後,発熱,腹部膨満感,全身倦怠感の持続および白血球数,CRP値の上昇を認めた.細菌性腹膜炎を疑い,抗生剤を使用したが,症状の改善を認めなかったために開腹術を施行した.術中所見では,ダグラス窩を中心に腹膜,腸管は強固に癒着しており,腹膜と腸管表面に多数の白色小結節を認めた.そのため癒着剥離術,腹腔内洗浄ドレナージを施行した.また同時に右付属器に高度の炎症所見を認めたため,右付属器切除術を施行した.術後検査所見は改善したが,腹満感と微熱が続いた.病理組織学的検査の結果,卵管表面に類上皮細胞を含む肉芽腫を認め,結核性腹膜炎と診断し,現在加療中である. 本症例は,結核の家族歴があり,性器結核が手術を契機に結核性腹膜炎として顕症化したものと考えられた.
Key words:tuberculous peritonitis, gynecologic operation, family history
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(1)
25-29, 2002
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