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【原 著】
卵巣成熟嚢胞性奇形腫内の嫌気性菌感染の再発により膿胸をきたした1例
石塚 康夫, 松本 隆万, 杉浦 健太郎, 篠崎 英雄, 西井 寛, 渡辺 明彦, 落合 和彦, 田中 忠夫1)
東京慈恵会医科大学青戸病院産婦人科, 東京慈恵会医科大学付属病院1)
症例は39歳未経妊未経産.10歳時両側卵巣成熟嚢胞性奇形腫にて,左附属器摘出術,右卵巣嚢腫摘出術を施行.17歳,31歳時同疾患再発にて右卵巣嚢腫摘出術を施行した.11カ月後,ダグラス窩に残存していた腫瘤にBacteroides感染を合併したため,ダグラス窩切開ドレナージを施行した.その後は自覚症状ないため経過観察となっていた.平成11年6月28日より下腹部痛,39度台の発熱を認め他院入院し,抗生剤,鎮痛剤にて経過観察していたが,7月4日より呼吸困難出現し,7月5日当院紹介受診となった.卵巣嚢腫茎捻転または破裂を考え緊急手術を予定するも,両側膿胸,呼吸不全により気管内挿管後緊急手術とした.開腹所見は,腹腔内炎症及び高度癒着で感染性膿汁及び卵巣成熟嚢胞性奇形腫内容と思われる脂肪組織を多量に認めた.術式は,開腹ドレナージで胸腔トロッカーを術後に挿入した.このときは腹膜嚢腫内にBacteroidesが感染し,腹膜炎さらには膿胸,敗血症へ発展したと考えられた.その後,気管切開を施行し3カ月間人工呼吸器管理を行った.一時全身状態落ち着き退院するも,ダグラス窩に腫瘤残存し,発熱を繰り返すため完全手術を目的に平成12年6月13日X線透視下で腹式単純子宮全摘術,右附属器摘出術,ダグラス窩腫瘤核出術を施行.術後病理にてダグラス窩に存在した腫瘤は,腹膜嚢腫ではなく,成熟嚢胞性奇形腫であった.以後発熱なく経過良好である.
Key words:Pyothrax, Bacteroides infection, Mature cystic teratoma of the ovary
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(1)
37-42, 2002
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