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【原 著】
癌性胸水に対し,ネダプラチン胸腔内投与法が有効であった1例


石塚 康夫1), 松本 隆万1), 松本 直樹1), 篠崎 英雄1), 西井 寛1), 渡辺 明彦1), 落合 和彦1), 田中 忠夫2)
1)東京慈恵会医科大学附属青戸病院産婦人科
2)東京慈恵会医科大学産婦人科


 卵巣癌IV期の癌性胸水のコントロールにネダプラチンの胸腔内投与が有効であった症例を経験したので報告する.
 症例は,64歳女性,下腹部痛を主訴に当科受診.画像上,骨盤右側に直径8cmの一部充実性部分を伴った嚢胞性腫瘤,また右側胸水を認めた.胸水細胞診はclass V,CA125 122 U/ml,CA19-9 158 U/ml,卵巣癌の診断にて開腹となった.腹腔内に肉眼的播種性病変なく,内性器全摘術,大網部分切除術を施行した.病理学的検査より,明細胞腺癌(pT3a Nx M1 Stage IV)の診断で,術後13日目パクリタキセル(TAX)180mg/m2,ネダプラチン(NDP)75mg/m2(TN)の腹腔内投与を施行した.その後胸水のコントロールつかず,4週間後にTAX 180mg/m2静脈内投与,NDP 75mg/m2を生理的食塩水で250mlとし2時間で胸腔内へ注入した.NDPの胸腔内投与時における薬物動態を調べるため,血中濃度測定を投与直前,投与終了直後,1,3,6,12,18,24,48,72,96時間後に行った.Cmax 0.8μg/ml,AUC 10.8μg/ml・hr,t1/2 3.61hrであった.胸腔内投与後,胸痛,他胸部症状を認めず,右側胸水は化学療法施行5日目に減少した.現在周期的化学療法施行中であるが,胸水の再貯留は認めていない.

Key words:Intrapleural Therapy, Nedaplatin, Pharmacokinetics

日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(4) 329-334, 2002


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