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【原 著】
重症妊娠悪阻からWernicke脳症を発症した1症例


和田 麻美子, 小川 恵吾, 内田 雄三, 深田 幸仁, 平田 修司, 星 和彦
山梨医科大学産婦人科


 Wernicke脳症はビタミンB1欠乏による代謝性脳症で,重症妊娠悪阻で高度にビタミンが欠乏した場合に発症することがあるため,注意を要する.
 自験例は24歳の1回経産婦.妊娠12週4日,重症妊娠悪阻にて近医に入院,糖液を中心とした輸液療法が開始されたが,四肢脱力および開眼凝視症状が出現し,当院紹介となった.Wernicke脳症を疑い,直ちにビタミン剤の大量補給を開始したところ,神経症状はすみやかに改善した.退院後の妊婦健診では,母および胎児に異常は確認できなかった.妊娠27週1日,前期破水を来たし,同日862g Apgar score1分後4点の女児を経膣分娩した.先天奇形として水頭症および大脳皮質小脳形成不全を認めた.現在では母の神経症状は軽度のめまいを認めるのみに改善している.
 自験例を含めた妊娠に伴うWernicke脳症の本邦の報告例32例を考察すると以下のようにまとめることができる.
(1)発症時期の多くは妊娠12〜16週である.(2)人工妊娠中絶が症状の改善につながるものとはいえず,妊娠継続の可否については症例毎に検討していく必要がある.(3)子宮内胎児死亡例は,ほぼ全例がビタミンB1療法開始前もしくは開始直後の死亡であり,母体の加療が早ければ予防できたといえる.(4)母体の神経症状が完全に消失したとの報告は2例のみであった.後遺症はほとんどが軽度であるが,中には重篤な例もある.(5)児の長期予後について報告している文献はなく,今後さらに多症例を集約して検討していく必要がある.

Key words:Wernicke's encephalopathy, Hyperemesis gravidarum

日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(4) 375-380, 2002


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