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【原 著】
顆粒膜細胞腫と鑑別困難で,術後早期に再発した悪性卵巣腫瘍の臨床病理像
大平 哲史1), 伊東 和子1), 正木 千穂1), 小原 みほ子1), 岡 賢二1), 塩原 茂樹1), 塩沢 丹里1), 白川 貴士2), 小西 郁生1)
1)信州大学医学部産科婦人科学教室 2)市立岡谷病院産婦人科
婦人科腫瘍の中には小型で円形の腫瘍細胞がびまん性に増生する組織像を呈し,鑑別診断に苦慮するものがある.今回我々は顆粒膜細胞腫との鑑別診断が困難で,術後早期に再発した悪性卵巣腫瘍の2例を経験した.症例1は38歳,左卵巣腫瘍の診断で開腹手術を施行,迅速組織診断にて顆粒膜細胞腫と診断された.永久標本では異型の強い円形の小細胞がびまん性に増生しており,未分化癌あるいはprimitive neuroectodermal tumor(PNET)の可能性が考えられた.術後1か月で傍大動脈リンパ節が腫大し,化学療法を行うも効果は一時的であり,術後8か月で死亡した.症例2は40歳,右卵巣腫瘍に対して前医にて摘出術が施行され,病理診断は顆粒膜細胞腫であり経過観察されていた.しかし術後6か月で腹腔内に多発性の再発腫瘍と高カルシウム血症が出現した.前医の手術標本を再検討したところ,腫瘍細胞が小胞巣構造をとり顆粒膜細胞腫に矛盾しない像に加えて,小型の細胞が密に増生し小細胞癌と考えられる部分も認められ,卵巣原発の小細胞癌と診断した.再開腹にて播種巣の摘出手術を施行したが急速な経過をたどり,初回手術より8か月後に死亡した.小円形細胞性腫瘍の鑑別に際しては,HE染色にてその組織形態学的特徴を詳細に検討するだけでなく,適切な免疫組織染色を行い,腫瘍の性格を同定することが重要である.
Key words:Granulosa cell tumor, Small cell carcinoma, PNET, Small round cell tumor, Ovary, Differential diagnosis
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(1)
17-23, 2003
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