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【原 著】
β-サラセミア合併妊娠の1例
長瀬 寛美, 山賀 明弘, 毛利 順, 植村 次雄, 酒井 リカ1), 原野 照雄2)
藤沢市民病院産婦人科 1)藤沢市民病院血液膠原病科 2)川崎医科大学生化学II教室
サラセミアは,遺伝的なヘモグロビン合成の異常に基づく先天性溶血性貧血であり日本では比較的まれな疾患である.今回我々は,鉄剤不応症の小球性低色素性貧血で妊娠35週に当院に紹介され,精査の結果β-thalassaemia合併妊娠と判明した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は,30歳の経産婦で妊娠28週よりHb9.1mg/dlと貧血を認めた.鉄分投与するも改善せず,血清鉄が正常でありHbA2とHbFが高値でありヘモグロビンβ鎖が低値であることよりサラセミアが疑われた.しかし,貧血が軽度のため輸血は行わず,妊娠39週で2,890gの女児を分娩となった.その後の遺伝子解析の結果β-thalessemiaと診断された.妊娠中に鉄欠乏性貧血のため小球性低色素性貧血をみとめることは多いが,サラセミアも念頭に置き鉄剤不応性貧血の場合過剰な鉄剤投与を回避する必要がある.
Key words:Pregnancy, β-thalassemia, Anemia, Gene expression profiling
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(1)
61-65, 2003
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