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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
妊娠合併症(呼吸器疾患・その他) 網膜芽細胞腫による両眼失明女性の妊娠例
坂本 理恵1), 長田 久夫1), 飯塚 美徳1), 増田 健太郎1), 加来 建志1), 関谷 宗英2)
千葉大学附属病院産婦人科1), 千葉大学大学院医学研究院生殖機能病態学2)
網膜芽細胞腫は,3歳以下の小児に発症する胎生期網膜芽細胞由来の悪性腫瘍で,頻度は出生2万に1人,性差はないとされている.本症の10−30%は,両眼性の早期発症で,常染色体優性の遺伝形式を呈する.病因に関しては13番染色体長腕上のRB遺伝子の異常であることが判明している.今回我々は,本症による両眼失明女性の妊娠・分娩管理という貴重な経験をしたので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は,34歳,0G0P. 1歳半で網膜芽細胞腫と診断され,直ちに右眼を摘出,左眼には放射線治療が施行されたが7歳で失明に至った.夫も,小児期に詳細不明の原因で両眼を失明している.この2名の他に両家系に眼疾患を有するものはいない.平成13年11月27日妊娠11週にて当科初診.155cm,36.8kg.右眼は義眼,左眼は眼球癆であった.充分な遺伝カウンセリングの後,本人の血液細胞を用いたFISH法を施行し,13q14.2のRB領域に欠失のないことが確認された.その後母児とも著変なく経過していたが,妊娠32週ごろより腰部痛,下肢浮腫が次第に増強,また児の発育に停滞が出現した.このため入院予定であったところ,36週0日陣痛が発来,分娩は速やかに進行し,同日2005gの男児をAps 7/9で経膣分娩した.母体の産褥経過に異常なく,母児同室にて授乳,おむつ交換など基本的な育児能力の習得を確認後,27日目退院となった.児の眼底所見には生後1か月の現在まで異常は認められていない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
231-231, 2002
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