|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
栄養・代謝 妊婦における耐糖能異常と脂質代謝との関連について
船橋 宏幸1), 水本 賀文2), 高橋 宏典2), 藤井 和之2), 秦 俊昭2), 提坂 敏昭2), 奥山 輝明3)
船橋レディースクリニック1), 自衛隊中央病院産婦人科2), 山王病院産婦人科3)
[緒言]妊娠糖尿病(以下GDM)は胎児奇形率や母体の合併症が増えることから,一般産科診療における妊婦健診においても早期に診断し,厳格な管理をすることが重要である.一方,母体栄養の胎児への供給は糖質とならんで脂質も重要な位置を占め,妊娠により脂質代謝は大きく変化し,GDMや妊娠中毒症などでは特徴的な脂質代謝の変化が認められている.今回,我々は妊娠初期に耐糖能スクリーニング検査として用いられている50gの糖負荷試験(以下GCT)を実施した妊婦64例において血中脂質のうちTG,TC,HDLおよびLDLを妊婦の同意を得て測定した.GCTの陽性基準を140mg/dl以上とした.[結果]妊娠経過に伴ってTG,TCおよびLDLは増加したが,GCT陽性群はHDLの上昇が小さかった.そこでTCに対する比をとると陰性群のHDL/TCは妊娠経過によって有意な変化が認められなかったのに対して陽性群のHDL/TCは妊娠経過とともに低下し,r=−0.91,p<0.001と強い逆相関を示した.またVLDLをTC-HDL-LDLで近似すると陽性群は妊娠中期から上昇することがわかった.また,陽性例について75gの糖負荷試験を実施したがGDMはなかった.[考察]一般にGDMの脂質の特徴としては正常妊娠と比べてTGとVLDLの上昇とLDLの低下が指摘されている.今回50gGCTが陽性で75gOGTTでGDMに至らない妊娠例においても脂質の変化が認められ,脂質代謝に影響を及ぼしていることがわかった.今後,一般産科臨床においてGDMの潜伏因子を感知して臨床指導に役立つと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
232-232, 2002
|