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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))

【一般演題】
栄養・代謝
妊婦貧血の再検討


上里 忠和, 久須美 真紀, 川村 久恵, 山藤 晶子, 大岡 史子, 蔵持 和也, 梁 善光, 貝原 学
帝京大学産婦人科


[目的]正常妊娠では血漿量の増加が赤血球量の増加に比較してより著明のため血液は希釈される.従って血色素量(以下Hb)やヘマトクリット(以下Ht)値だけから鉄欠乏性貧血などを非妊娠時と同様の基準で診断することは必ずしも適切であるとはいえない.我々は妊娠時の貧血の診断にはHbのみならず平均赤血球容積(MCV)も併せて考慮する必要があると考えている.本研究では,妊婦の貧血の診断を下すにあたり鉄欠乏状態をより大きく反映するといわれている血清トランスフェリンレセプター(sTfR)を測定しこの仮説の正当性につき検討したので報告する.[対象と方法]妊娠12週から35週までの妊婦で鉄剤の投与をうけていない妊婦125例を対象とした.静脈血を採取し血清中sTfRはELISA法で測定した.血清鉄およびフェリチンはそれぞれ直接法,EIA法で測定した.妊婦を〔A群〕HbとMCVが正常な群(n=42),〔B群〕Hbが低値(Hb<11.0g/dl)だがMCVが正常な群(n=43),〔C群〕MCVが低値(MCV<85μm3)だがHbが正常な群(n=17),および〔D群〕MCV,Hbがともに低値の群(n=23)の4群に分類した.この4群のsTfR値,フェリチン値,血清鉄値を比較検討した.[成績]4群のsTfRの値はそれぞれA群18.0±6.4(nmol/L),B群21.5±8.1,C群22.6±12.5,D群35.8±17.7であった.A,B,C群間には有意差は認められないが,D群では前3者に比べ有意に高値を示した(p<0.01).血清フェリチンや血清鉄値も同様の傾向を示した.[結論]妊婦においては鉄の欠乏状態はHb単独の値によっては予測することはできない.今回の検討により妊娠中の貧血はHbの値のみならずMCVの値を考慮して判定する必要性があると考えられた.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3) 233-233, 2002


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