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【原著】
急性心筋梗塞合併妊娠の1例
土井 めぐみ, 代田 琢彦, 奥津 由紀, 堀永 宏史, 三室 卓久, 井槌 慎一郎, 石塚 文平
聖マリアンナ医科大学産婦人科
妊娠中の心筋梗塞の発症率は10万分の1で,その20%が発症時に死亡するといわれており,予後は極めて不良である.今回我々は妊娠31週で急性心筋梗塞を発症し,妊娠34週に帝王切開分娩で生児を得た症例を経験した. 症例は41歳主婦,1経妊1経産.妊娠初期より近医で妊娠経過管理されていた.妊娠31週2日に突然強い前胸部痛,背部痛出現,心電図上V1〜V4にQSパターン,V2からV4にST上昇を認め,CK2,090 IU/l LDH 1,961 IU/lと高値示し,急性心筋梗塞を疑い当院受診となった.来院時,V1〜V2にQSパターンを認め,心エコーでは前壁に壁運動の低下を認めEF(Ejection Fraction,駆出率)は41%であった.胸部レントゲン検査では心拡大や,肺うっ血の所見はなく心不全は認めなかった.症状は安定していたため安静 モニター管理 バイアスピリン内服で厳重に管理し妊娠継続とした.児の成熟度と母体のリスクを考慮し,循環器内科,麻酔科,小児科,産婦人科協力のうえ妊娠34週3日に硬膜外麻酔下で予定帝王切開術を行った.2,160 gの生児を得,apgar score 1分後10点,5分後10点であった. 妊娠中の心筋梗塞の原因は冠動脈の攣縮が多いとされているが,本症例術後の心臓カテーテル検査では有意な器質的冠動脈病変を認めず,攣縮誘発試験も陰性であった. 妊娠中に胸痛,背部痛を訴え心筋梗塞が疑われた場合,早期より高次医療機関での精査,加療が必要である.
Key words:Myocardial Infarction, Pregnancy
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(1)
35-40, 2004
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