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【原著】
片側腟留血腫を呈した重複子宮例の診断・治療
伊香 加納子, 古谷 健一, 長谷川 ゆり, 田中 壮一郎, 笹 秀典*, 松田 秀雄, 菊池 義公
防衛医科大学校産科婦人科 *防衛医科大学校分娩部
腟留血腫を呈し,非対称性子宮奇形を疑った症例の検査・治療の進め方は,未だ確立されていない. 今回我々は,片側腟留血腫を呈した重複子宮・重複腟例に対し,腹腔鏡および病理組織所見にて確定診断,腹腔鏡補助下に腟形成術を施行し,良好な経過を得ている1例を経験したので文献的考察とともに報告する. 症例は12歳女児,初経は11歳で以後整,徐々に増大する腹部膨満感を主訴に来院,腹痛なし.腹部は膨隆して臍上に達し,外陰部は膨隆した嚢胞性病変に圧迫され不明瞭.経腹超音波断層法,腹部CT,骨盤MRI,静脈性尿路造影等の精査にて,重複子宮,重複腟,片側腟留血腫・腟閉鎖および右腎無形成,左重複腎盂尿管と術前診断し,腹腔鏡補助下腟形成術を施行した.腹腔鏡所見では,腟壁切開にて月経血排出とともに左右対称の重複子宮を確認,月経血の逆流と考えられる少量の暗赤色腹水を認めた.両側卵管および両側卵巣は正常,腹腔内に明らかな子宮内膜症病変を認めなかった.腟壁の病理所見は,軽度炎症を伴った腟粘膜と頸管粘膜であり,重複子宮,重複腟の右腟閉鎖および右腎無形成,左重複腎盂尿管と確定診断した.術後経過は順調,左腟口および開口・形成した右腟口は共に開口し,月経血量の増加を認めている. 本症例の経験により,非対称性子宮奇形の診断・治療における腹腔鏡の利用は,低侵襲かつ有用であると考えられ,病理組織所見を含めた確定診断の重要性を再認識した.
Key words:Mülerian duct anomalies, double uterus, hematocolpos, laparoscopy, renal agenesis
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(4)
365-371, 2004
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