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【原著】
臍転移により発見された卵巣癌の一例
松原 正和, 長田 久美, 小原 みほ子, 本道 隆明, 木村 薫
厚生連 篠ノ井総合病院 産婦人科
悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Joseph's noduleと呼ばれ,非常に稀で,予後不良の兆候とされる.今回,我々は臍転移により発見された卵巣癌の一例を経験したので報告する.症例は59歳,2回経妊2回経産.臍部の肉芽組織様病変からの出血のため某病院皮膚科を受診し,病理組織検査にて,腺癌のmetastatic carcinomaの診断を受けた.同院産婦人科での超音波検査で両側卵巣腫大を認めたため,当院へ紹介された.CA125が817 U/mlと高値で,各種画像検査をあわせて卵巣癌を疑い,腹式単純子宮全摘・両側付属器摘除・右閉鎖リンパ節郭清・S状結腸部分切除・大網切除・臍切除術を行なった.病理診断は,両卵巣の漿液性腺癌で,臍部,大網内,大腸漿膜面,閉鎖リンパ節に転移を認めた.臨床進行期分類はstage IVと診断した.経過良好で術後17日目に退院し,現在,外来にて全身化学療法としてCAP療法を行なっているが,CA125は低下傾向が続いており,超音波検査でも明らかな病巣は認められず,外科的切除後の化学療法の効果が期待できると考えられた.
Key words:Sister Mary Joseph's nodule, umbilical metastasis, ovarian carcinoma
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(4)
377-382, 2004
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