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【原著】
予防的付属器切除術を行った卵巣癌ハイリスク女性の1例
市川 喜仁1), 平井 康夫2), 荷見 勝彦2), 宇都宮 譲二1)
1)癌研究会附属病院 家族性腫瘍センター, 2)婦人科
一般女性に比べて卵巣癌罹患リスクの高い家族性乳癌・卵巣癌家系の女性(卵巣癌ハイリスク女性)に対し,欧米の一部施設では卵巣癌の予防目的に付属器切除術が行われている.今回,卵巣癌のリスク減少のために予防的付属器切除術を施行した1例を経験した.本例に対する我々の取り組みとともに,わが国における卵巣癌ハイリスク女性に対する今後の課題について,予防的付属器切除術の観点から文献的考察を加えて報告する. 症例は47歳,2経妊1経産婦.45歳時に同時性両側乳癌にて手術治療.再発兆候はなかったが,平成15年5月に4 cm径の右卵巣嚢腫を指摘され,乳癌再発予防目的のホルモン療法を中断.同時に予防的付属器切除術を希望して当科を受診した.家族歴は,母と母方おばが卵巣癌(68歳,52歳発症),母方祖母が乳癌(50歳代発症),母方おじが胃癌(70歳発症).我々は,予防的付属器切除術が卵巣癌のリスク減少だけでなく,女性ホルモン遮断による乳癌再発予防にも効果的と考え,十分なカウンセリングを行った後に,当院Tumor BoardおよびIRBに予防的付属器切除術の審議を申請.承認後の平成16年1月腹腔鏡下に同手術を施行した.両側付属器の連続切片の病理診断では,悪性所見を認めなかった.
Key words:Ovarian carcinoma, Prophylactic surgery, Salpingo-oophorectomy, High-risk
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(1)
9-14, 2005
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