|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
【原著】
悪性転化および異型甲状腺腫を伴う成熟嚢胞性奇形腫の2症例―術前診断と病理学的検討―
中村 学, 水竹 佐知子, 臼井 真由美, 宮本 純孝, 富田 初男, 安藤 昭彦
さいたま赤十字病院産婦人科
今回われわれは,悪性および低悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫を2例経験した.【症例1】38歳未婚女性.腹痛と腹部膨満感を主訴に受診.超音波検査にて,臍上に及ぶ充実部分を有する卵巣腫瘍を認めた.腫瘍マーカーはCEA,CA125,CA72-4が高値であった.MRI検査では脂肪成分を含む腫瘍を認め,造影効果を軽度有する所見もあり,immature teratomaが疑われた.開腹では,右卵巣が小児頭大に腫大.右附属器切除を施行.腫瘍は脂肪成分を含む液体と毛髪が大部分を占め,壁肥厚部分が存在.病理検査では成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化(扁平上皮癌)であった.【症例2】66歳の閉経後女性.アレルギー性肉芽腫性血管炎にて,当院内科通院中に腹痛あり.超音波検査にて両側の卵巣に一部充実性部分を有する嚢胞性腫瘤を認め,卵巣腫瘍の疑いで当科受診.腫瘍マーカーはCA125,CA19-9,SCCが高値であった.MRI検査では奇形腫と診断したが,内部に壁肥厚部分が存在し,悪性化も疑われた.開腹では,両側卵巣は超手拳大に腫大.子宮全摘出,両側附属器切除を施行.右卵巣は脂肪成分を含む液体が主で,壁肥厚部分が存在.左卵巣は脂肪成分を含む液体と毛髪が大部分を占め,充実性部分が存在.病理検査では,右卵巣は核異型を伴う甲状腺腫を有する成熟奇形腫であり,左卵巣は核異型を伴う扁平上皮の乳頭状増殖を有する成熟奇形腫であった.左右の成熟奇形腫内に別々の異型性病変を有した稀な症例であった.
Key words:mature cystic taratoma, malignant transformation, bilateral ovaries
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(1)
21-26, 2005
|