|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
【原著】
自然発生の子宮内外同時妊娠の1例
伊香 加納子, 古谷 健一, 笹 秀典*, 田中 壮一郎, 松田 秀雄, 菊池 義公
防衛医科大学校産科婦人科 *防衛医科大学校病院分娩部
子宮腔内と子宮腔外の同時妊娠が自然発生することは極めて稀であり,その頻度は約30,000件に1件と報告されている.しかし,近年の不妊治療の普及に伴い,その頻度は増加しており,日常臨床においても考慮すべき疾患であると考えられる.今回,我々は自然発生による子宮内外同時妊娠で,卵管妊娠に対する手術療法により子宮内妊娠を温存,健児を得ることができた1例を経験したので報告する. 症例は35歳,1経妊1経産.妊娠7週4日にて初診,子宮内に頭臀長11 mmの心拍陽性の胎芽を認めた.妊娠8週2日,急性腹症にて来院.血圧90/50 mmHg,末梢冷汗もありプレショック症状を呈していた.経腟超音波検査で,子宮内には頭臀長18 mmの胎児,子宮左側に血液凝固塊様の中に胎児心拍陽性の胎嚢を認めた.子宮内外同時妊娠,子宮外妊娠破裂の疑いにて緊急手術施行.腹腔内に2,000 ml以上の出血が貯留し,左卵管峡部妊娠が破裂しており,動脈性の出血を認めた.左卵管切除術を施行,術後経過順調で子宮内の妊娠は継続し,妊娠37週2日,2,570 gの女児を正常経腟分娩した. 子宮内外同時妊娠は,その診断を念頭において診療に当たらない限り,早期発見は難しい.一般の外来診療においても,子宮内の胎嚢確認後,付属器のチェックも必ず同時に行うべきである.
Key words:Intra- and Extra-Uterine Pregnancy, Heterotopic Pregnancy, Surgical Treatment
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(1)
27-30, 2005
|