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【原著】
肺梗塞と高カルシウム血症を合併した卵巣明細胞腺癌の一例
種市 明代, 藤原 寛行, 嵯峨 泰, 竹井 裕二, 泉 章夫, 大和田 倫孝, 鈴木 光明
自治医科大学産婦人科
卵巣明細胞腺癌に血栓症と高カルシウム血症を合併し,治療に苦慮した症例を経験したので報告する.症例は55歳,下腹部腫瘤感を主訴に2003年9月近医を受診し,卵巣癌の疑いで当科を紹介された.初診時,臍高に達する卵巣腫瘍が認められ,画像所見ではmixed patternを呈した.下肢エコーにて深部静脈血栓が確認されたため,下大静脈フィルターを挿入した.しかし翌日肺梗塞を発症し,院内にて心肺停止となった.直ちに心肺蘇生術が施行され,体外循環導入,カテーテル下肺動脈血栓除去術および抗凝固療法が施行された.治療が奏効し,翌日体外循環から離脱,16日後には人工呼吸器から離脱し,意識障害を残さずに回復した.その後,腫瘍により惹起されたと思われるparathyroid hormone related protein(PTHrP)の高値と高カルシウム血症を認め,それによる腎性尿崩症が引き起こされた.ビスホスフォネート製剤などの投与により症状の改善がみられたため,2004年1月,両側付属器摘出,大網切除ならびに腹膜播種巣の切除が施行された.左卵巣原発の明細胞腺癌であり,腹腔内には著明な播種が認められた(stage IIIc).術後PTHrPの低下がみられた.また免疫組織染色により卵巣癌上皮の細胞質にPTHrPの局在が確認された.卵巣明細胞腺癌は,血栓形成に伴う肺梗塞などの重篤な合併症を起こす可能性があるため慎重な管理が必要と考えられた.
Key words:ovarian clear cell adenocarcinoma, pulmonary embolism, humoral hypercalcemia of malignancy, PTHrP
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(1)
43-46, 2005
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