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【原著】
術前に卵巣粘液性腫瘍と診断した顆粒膜細胞腫の3例


井吹 ゆき, 大平 哲史, 伊東 和子, 加藤 清, 岡 賢二, 堀内 晶子, 塩沢 丹里, 小西 郁生
信州大学医学部産科婦人科学教室


 卵巣顆粒膜細胞腫はときに多嚢胞性成分主体の腫瘤像を呈し,他の嚢胞性腫瘍との鑑別に苦慮する場合がある.今回我々は術前に卵巣粘液性腫瘍と診断し,手術を施行したところ病理組織診断にて顆粒膜細胞腫であった3例を経験した.年齢は73歳,80歳,70歳で,画像上腫瘤は3例とも多嚢胞性成分主体であり,血清腫瘍マーカーは3例とも全て陰性であったが血清エストラジオール値はそれぞれ107.0 pg/ml,188.8 pg/ml,97.2 pg/mlと高値であった.境界悪性卵巣粘液性腫瘍の術前診断で開腹術を施行し,腫瘍を摘出した.摘出腫瘍の病理組織診断は3例とも顆粒膜細胞腫であったため,術前のMRI画像所見を再検討したところ,多嚢胞性成分の一部に出血像を呈する充実性部分が認められた.エストロゲン産生性の多嚢胞性腫瘤で内部に出血の存在が示唆され,かつ腫瘍マーカーの上昇を伴わない卵巣腫瘍では,顆粒膜細胞腫の可能性を考慮すべきであると思われる.

Key words:Ovary, Granulosa cell tumor, Magnetic resonance imaging(MRI), Estradiol, Tumor marker

日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(1) 47-54, 2005


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