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【原著】
頭部MRIにて著明な異常所見を認めた妊娠子癇・産褥子癇の2例
松原 正和, 橘 涼太, 本道 隆明, 木村 薫
JA長野厚生連篠ノ井総合病院産婦人科
今回,我々はMRIにて著明な異常所見を認めた,妊娠子癇および産褥子癇の2例を経験したので報告する.症例1は26歳,0回経妊.妊娠35週3日に子癇を発症した.頭部MRIのFRAIR像では両側基底核と後頭葉に,高信号領域を認め,DWI,MRAでは異常を認めなかった.ジアゼパム,硫酸マグネシウム,濃グリセリン・果糖注射液,オザグレルナトリウムの投与を行い,妊娠35週4日に帝王切開術を施行し,術後8日目の頭部MRIでは病変部の著明な改善を認め,術後15日目に退院した.症例2は27歳,0回経妊.39週2日に正常経腟分娩したが,産褥4日目に子癇を発症した.ジアゼパム,硫酸マグネシウムの投与を行い,症状は軽快した.発作2日後の頭部MRIのFRAIR像では,左後頭葉と左頭頂葉に,高信号領域を認め,DWIでは異常なく,MRAでは脳血管攣縮像を認めた.発作4日後の頭部MRIでは病変部の改善を認め,産褥13日目に退院した.発作34日後の頭部MRIでは病変部は完全に消失していた.2例とも頭部MRIが子癇の診断,治療評価に有用であり,また,その所見から,子癇の発生機序として2例とも,脳血管攣縮から低灌流状態をきたして脳浮腫となり,痙攣発作を起こしたのではないかと推測された.また,子癇の治療経過が順調な場合は,概ね,発症直後,発症1週間,1か月前後でMRIによる経過観察を行うのが適当と考えられた.
Key words:Eclampsia, Brain MRI, Vasospasm
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(4)
397-403, 2005
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