|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
【原著】
卵巣上皮性境界悪性腫瘍の臨床病理学的検討
萩原 秀文, 嵯峨 泰, 大和田 倫孝, 桑田 吉峰, 高橋 佳容子, 高橋 寿々代, 藤原 寛行, 泉 章夫, 鈴木 光明
自治医科大学産婦人科
卵巣上皮性境界悪性腫瘍の臨床病理学的検討を行なった.1988年から2003年までの16年間に自治医科大学附属病院で治療した卵巣上皮性悪性腫瘍(境界悪性腫瘍を含む)379例中,境界悪性腫瘍は43例,11%だった.年齢は11〜77歳(中央値52歳)と幅広く分布し,進行期はIa 25,Ib 3,Ic 13,IIIb 2であり,I期が95%を占めた.組織型は漿液性20,粘液性23とほぼ同数であった.腫瘍径による比較では,10 cm以上の大型のものが粘液性腫瘍では91%であり,漿液性腫瘍(65%)に比べて有意に高率であった(p=0.04).また,60歳以上の高齢者の占める割合は粘液性腫瘍(48%)が多い傾向を示した(漿液性腫瘍20%,p=0.055).腫瘍マーカーに関しては,漿液性腫瘍においてCA125(カットオフ値35 U/ml)が55%と比較的高い陽性率を示したとともに,術後に全例陰転化したことから,CA125は漿液性腫瘍のマーカーとなることが示唆された.術中迅速病理診(28例に施行)の結果は,54%が境界悪性と正診されたものの,良性と診断されたものが36%,悪性と診断されたものが11%みられ,under diagnosisになる症例が比較的多かった.予後は,10年無病生存率が94%と良好であったが,10年以上の経過の後に再発した晩期再発例もみられ,長期にわたる経過観察が必要と考えられた.
Key words:Ovarian Surface Epithelial-Stromal Tumor of Borderline Malignancy, Tumor marker, CA125, Intra-operative Frozen Section Diagnosis
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(4)
409-413, 2005
|