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【原著】
粘液の溶解・除去に炭酸水素ナトリウム溶液が有効であった腹膜偽粘液腫の3例
松原 正和, 橘 涼太, 本道 隆明, 木村 薫
JA長野厚生連篠ノ井総合病院産婦人科
腹膜偽粘液腫の3例につき検討し,原発巣切除に加え,炭酸水素ナトリウム溶液による腹腔内洗浄が治療として有効と考えられたので報告する.【症例1】69歳女性.右卵巣粘液性腺腫の破綻による腹膜偽粘液腫に対し右付属器摘出術,大網切除術施行.加温生理食塩水と低分子デキストランで腹腔内洗浄するも粘液除去は困難で,術後3か月で再発し,化学療法(CAP)を行うも無効.術後12か月で第2回手術(腹式単純子宮全摘術,左付属器摘出術,虫垂切除術).初回術後69,97か月で,それぞれ第3,4回手術施行(粘液除去術,炭酸水素ナトリウム溶液による腹腔内洗浄).炭酸水素ナトリウム溶液使用により,粘液の溶解・除去が容易であった.すでに偽粘液腫は腹壁に浸潤しており,その後も再燃し,初回術後126か月で死亡.【症例2】48歳女性.虫垂・右卵巣の粘液性腺腫,虫垂原発の腹膜偽粘液腫に対し腹式単純子宮全摘術・両側付属器摘出術・虫垂切除術施行.術中,炭酸水素ナトリウム溶液による腹腔内洗浄を行い,粘液の大部分を除去しえた.術直後より少量の粘液貯留を認めるものの,術後12か月で明らかな増加を認めていない.【症例3】32歳女性.左卵巣境界悪性粘液性嚢胞性腫瘍の破綻による腹膜偽粘液腫に対し左付属器摘出術・虫垂切除術施行.術中,炭酸水素ナトリウム溶液による腹腔内洗浄を行ない,ほぼ完全に粘液を除去しえた.術後10か月で再発を認めていない.
Key words:pseudomyxoma peritonei, mucin, mucolytic agent, sodium bicarbonate
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(4)
427-432, 2005
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