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【原著】
卵巣腫瘍と鑑別困難であった骨盤内悪性傍神経節腫の一例
川島 秀明, 木下 俊彦, 深谷 暁, 高島 明子, 安田 豊, 矢野 ともね, 伊藤 元博
東邦大学医学部付属佐倉病院産科婦人科教室
症例は84歳,3経産.下腹部の膨満感を主訴に近医受診し下腹部腫瘤を指摘され紹介された.CT,MRI検査にて骨盤内に10 cm大の内部不整な腫瘤および腹水を認め,血中CA125が1,610 U/mlと高値であった.悪性卵巣腫瘍の疑いで手術を施行したところ,腫瘍はダグラス窩腹膜から発生し直腸近傍に存在し卵巣子宮には異常を認めなかった.極めて血管に富んだ腫瘍であり易出血性であった.腹膜,大網に播種性病変を認めた.病理学的所見では出血,壊死が著しく,HE染色では類円形の核と細顆粒状の好酸性の胞体よりなる腫瘍細胞が胞巣状構造を呈して発育していた.また,免疫組織染色で神経内分泌系マーカーであるSynaptphisin,NCAM,NSEが陽性であり,上皮性マーカーのEMA,Cytokeratinn7,20が陰性であり傍神経節腫と診断した.さらに転移を伴っていたため悪性傍神経節腫と診断した.カテコールアミン過剰症状は認めず,血中,尿中のカテコールアミンとその代謝産物はいずれも正常であったため非機能性腫瘍と考えられた. 傍神経節腫は稀な疾患であるが,副腎周囲やその他身体各所の傍神経節から発生する可能性がある.骨盤内あるいは下腹部に血流,血管に富む腫瘍においては傍神経節腫を鑑別疾患のひとつとして認識しておく必要がある.
Key words:malignant paraganglioma, Ovarian tumor
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(4)
449-453, 2005
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