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【原著】
線維筋痛症と診断され治療が有効であった2症例:難治性外陰部疼痛の取り扱いに関する考察
橘 涼太, 松原 正和, 本道 隆明, 木村 薫
厚生連篠ノ井総合病院産婦人科
婦人科外来では他覚的所見に乏しい外陰部痛を訴える患者を経験し,治療に難渋することがある.今回我々は他覚的所見に乏しい外陰部痛を訴え,その症状が線維筋痛症の一症状と考えられ治療が有効であった2症例を経験した.症例1は40歳の2回経産婦.外陰部痛を自覚し,カンジダ外陰腟炎として度々加療されるも症状は軽快せず,明らかな炎症所見や他覚的所見に乏しかった.リウマチ膠原病科にて線維筋痛症と診断され加療され症状は軽快した.症例2は42歳.未経妊で虫垂切除術の既往がある.急な下腹部痛を主訴に受診するも子宮筋腫以外明らかな異常は認めなかった.虫垂切除創部を中心に疼痛を訴えるため,前回手術による癒着と子宮筋腫の変性の可能性を疑い,腹式単純子宮全摘術を施行し,3か所の癒着の剥離術も施行し症状は軽快した.約1か月後急な腹痛にて緊急入院するも異常所見を認めず,また腟入口部の痛み等を訴えた.リウマチ膠原病科にて線維筋痛症と診断され加療され症状は安定している. 線維筋痛症は身体の広範囲に慢性的な痛みを自覚するものの,他覚的炎症所見を欠き,特徴的な圧痛点が多数あるものの,一般検査にて異常所見を認めない.診断には特徴的な18か所の圧痛点が用いられる.治療には鎮痛剤,向精神薬等が有効である.治療は長期にわたることが多いが,症状は緩和しうるものであることを理解すべきである.
Key words:fibromyalgia, vulvodynia, chronic vulvar pain
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 42(4)
455-459, 2005
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