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【原著】
腹腔鏡下癒着剥離術が有効だった慢性骨盤痛の一例
石川 哲也1), 本原 将樹1), 苅部 瑞穂1), 野口 有生1), 国村 利明2)
1)大和徳洲会病院 産婦人科 2)昭和大学 第一病理学教室
慢性骨盤痛は婦人科日常診療において頻繁に遭遇する疾患であるが,その診断には苦慮することも大変多い.今回我々は2年前から膀胱子宮窩に子宮筋腫と思われる小さな腫瘍の存在を認めていたが,原因の特定に至らない慢性骨盤痛および排尿末期痛と頻尿感を訴える患者に対し腹腔鏡検査を行った.その結果,術前検査で子宮筋腫と思われた小さな腫瘍の存在部位には膀胱が広範囲にわたって子宮前面に癒着しており,子宮筋腫ではないことが明らかになった.慢性骨盤痛と排尿症状は,癒着が原因で生じていると考え,腹腔鏡下にて癒着剥離術を行った.術後は早期より排尿末期痛および頻尿感に改善が見られ,手術後7日目の外来受診では骨盤痛も軽快していた.癒着部分での病理標本では密な繊維性結合組織が観察され,過去の炎症性変化による瘢痕化や線維化が疑われた.慢性骨盤痛に対しての腹腔鏡検査および腹腔鏡下癒着剥離術の有用性は未だ議論の余地はあるが,本症例のように原因となる疑わしい所見がある場合においては原因を究明・治療するにあたり有効な方法であると考えられた.
Key words:chronic pelvic pain, diagnostic laparoscopy, laparoscopic adhesiolysis, adhesion, micturition symptom
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(1)
17-21, 2006
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