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【原著】
長期胎盤遺残の1例
中村 学, 久保 祐子, 斎藤 麻紀, 宮本 純孝, 富田 初男, 安藤 昭彦
さいたま赤十字病院産婦人科
今回我々は,分娩時,胎盤の用手剥離が困難で,臨床的に癒着胎盤と考えられた症例をメソトレキセート(MTX)の筋注療法を施行し,分娩後95日に胎盤を自然排出し,子宮を温存できた症例を経験した.症例は38歳の0経妊0経産の初産婦.妊娠経過中に異常はなかった.妊娠40週4日,正常経腟分娩にて女児娩出.胎盤剥離徴候なく,全胎盤が遺残した.超音波検査,MRI検査にて癒着胎盤と診断.自然経過を見たが,胎盤の娩出がないため,産褥7日目よりMTX20 mg/日の5日間筋注投与を2週おきに施行した.当初3クールの予定であったが,最終的には5クール施行した.血中hCG-βサブユニットは4クール終了後に陰性化した.分娩後95日目に軽い腹痛を伴い,胎盤を出血なく自然排出した.娩出した胎盤は47 gで,病理組織検査では変性した胎盤組織であった.癒着胎盤でも出血,感染がなければ,器械的治療を施さず,長期に待機することも可能と考えられた.
Key words:Placenta accreta, Methotrexate, retained placenta
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(1)
23-27, 2006
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