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【原著】
広汎な腹腔内癒着(結核性腹膜炎後)を合併する子宮外妊娠症例に対する腹腔鏡下手術の経験


橋場 剛士, 水澤 友利, 吉村 泰典
慶應義塾大学医学部産婦人科


 広汎な腹腔内癒着を合併する子宮外妊娠症例を腹腔鏡下手術で治療する経験をしたので報告する.[症例]31歳(3経妊2経産)[既往歴]23歳時に結核性腹膜炎・腸閉塞のため開腹腸閉塞解除手術.[現病歴]妊娠6週に近医を受診したが,経腟超音波断層法にて子宮内に胎嚢が観察されず,子宮内容除去術にて絨毛が確認されなかったため,子宮外妊娠が疑われ当院紹介となった.[入院後経過]臍上5 cmから臍下10 cmにかけて手術創あり,腹膜刺激症状を認めなかった.子宮は前傾前屈で正常大,両側の付属器とダグラス窩領域に抵抗を認めた.経腟超音波断層法にて膀胱子宮窩に達する腹腔内出血を確認し,末梢血Hbは11.7 g/dlであった.腹腔内出血を伴う子宮外妊娠,陳旧性結核性腹膜炎と診断し,腹腔鏡下手術を施行した.[手術内容]左下腹部からopen法で第1トロカー挿入し,左下からの視野にて正中創直下の広汎な癒着を剥離した.次に臍から挿入したスコープで骨盤内を観察し,器質化した凝血塊を除去し,癒着を剥離し,右卵管采の妊娠組織のみを摘出し,卵管通色素検査,腹腔内の十分な洗浄を行った.[術後経過]腸閉塞を発症せず術後6日目に退院となり,その後自然妊娠に至った.[結語]広汎な腹腔内癒着を呈する症例でも,腹腔へのアプローチとスコープ位置の工夫と丁寧な癒着剥離の実施により安全に手術を完遂することが可能であった.

Key words:laparoscopic surgery, ectopic pregnancy, peritoneal tuberculosis, intestinal ileus, adhesion

日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(1) 29-33, 2006


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