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【特集】
子宮内膜症性嚢胞として経過観察中,腹腔鏡下手術により悪性腫瘍が確認された1例
清水 八尋, 長田 尚夫, 丸山 綾, 山本 範子, 永石 匡司, 松浦 眞彦, 山本 樹生
日本大学医学部産婦人科(駿河台日本大学病院)
不妊治療,特に体外受精による胚移植(IVF-ET)などの場合には子宮内膜症性嚢胞摘出術後の卵胞発育が不良であるなどの理由により,嚢腫摘出術を行わず不妊治療を続行する場合がある.子宮内膜症性嚢胞の診断のもとに長期にわたって不妊治療を行っていた類内膜腺癌について報告する. 症例は43歳,1経妊0経産で,他院で約5年間IVF-ETを受けていた.超音波断層診断法にて子宮内膜症性嚢胞の増大傾向,および壁の一部突起状肥厚を認めたため,精査目的にて当院に紹介受診となった.腫瘍マーカーは正常,造影MRIにて出血性嚢胞像,壁の一部に造影効果のある充実部分を認めたため悪性腫瘍も否定できないことから積極的に腹腔鏡下に卵巣腫瘍核出術を施行した.術中迅速病理診断の結果がadenocarcinomaであったため,開腹術に移行し卵巣悪性腫瘍の標準術式を施行した.術後病理診断はendometrioid adenocarcinoma satge 1cおよびEndometrial cyst,であった.子宮内膜症性嚢胞は,子宮内膜症ReAFS分類のstage 3〜4に相当し,不妊を合併している場合が多くIVF-ETが行われていることが多いことからMRIなどの画像診断による慎重な診断が求められる.
Key words:Endometriosis, Ovarian Carcinoma, IVF-ET
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(1)
49-52, 2006
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