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【症例報告】
妊娠経過中に急速な呼吸障害を呈した肺リンパ脈管筋腫症の1例
山代 美和子, 永石 匡司, 市川 剛, 正岡 直樹, 山本 樹生
日本大学産婦人科総合周産期母子医療センター
肺リンパ脈管筋腫(pulmonary lymphangioleiomyomatosis;pulmonary LAM)は,肺の平滑筋細胞がリンパ管,脈管,気道周囲に異常増殖して,びまん性に嚢胞性変化をきたす原因不明の稀な疾患である.好発年齢は20〜30歳代であるため妊娠に合併することもある.今回我々は,妊娠中呼吸障害を呈し,精査後初めてLAMと診断された症例を経験した.症例は,28歳初産婦.既往歴は小児喘息のみで,喫煙はない.現病歴は,前院にて妊婦健診通院中妊娠9週より咳嗽を認めていたが,妊娠25週で咳嗽,呼吸困難が増強したため,妊娠30週で前病院の呼吸器科に入院となった.胸部X線上,びまん性陰影を認め,SaO283%と低下し,入院後も症状の増悪を認めたため,妊娠31週6日加療目的にて当院に搬送された.呼吸器科と相談の上,母体呼吸不全の適応にて同日帝王切開術施行.1,453 g(AFD)の男児をApgar score 8点(1分後)にて娩出した.児はNICU管理となったが,その後の経過は良好であった.母体は胸腔鏡下肺生検にてLAMの確定診断に至り,Gn-RH analog療法を施行した.検査上では低酸素状態,呼吸機能障害は以前と変わらず認められながらも,悪化はしていない.妊娠中の呼吸障害に対して胸部X-Pは躊躇せずに施行し,加療により症状が改善しない場合は稀ではあるがLAMを念頭においておく必要があると考えられる.
Key words:Pulmonary lymphangioleiomyomatosis, respiratory disturbance, pregnancy, preterm delivery, HMB-45
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 43(4)
359-363, 2006
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